「出張専門業者の不正に関しての責任追及が開設者にも及ぶか否か」。どうだろうか?受領委任の取扱規程の趣旨からいえば「出張専門業者といえども施術管理者であることには違いがないので、開設者にも責任が及びます。」と簡単に回答されるだろう。しかしながら、保健所の開設届は、受領委任の取扱いなどお構いなしというか関与していない大昔に仕組まれたものだから、出張専門業者はオーナーに関係なく「独自での一人親方でオーナーなんてそんなの関係ねー」だから、厳密にいえば、「出張専門業者であっても開設者に責任が及ぶ」ことについての何らかの仕切りが必要だと思うのだ。行政からの文書回答は得られないだろうが、近畿厚生局長あてには確認の疑義照会文書を発出することとした。電話連絡や、また、書面を出しておくことにより、こちらから確認の電話を入れることもできるだろう。
あん摩・マッサージ・指圧足、はり師、きゅう師の施術に係る療養費に関する受領委任の取扱いについては、平成30年6月12日付保発0612第2号厚生労働省保険局長通知(最終改正:令和4年5月31日付保発0531第3号)により取り扱われているところ。施術所で法人に雇用され勤務している施術管理者は不正請求の返還等においては、施術管理者のみならず開設者(法人)も同等の責任を負うものとされている。一方で法人に雇用されている出張専門施術者の「受領委任の申請」には法人名称を記載することができず、不正請求の返還等は施術管理者だけが責任を負い、雇用主の法人の責任は言及されていない。同じように法人に雇用されていても施術所勤務と出張専門とでは、不正請求の返還等で差異が生じるのは不公平ではないのか、また、個人事業主を想定して設けられた出張専門制度にもかかわらず、法人に雇用されている条件で受領委任を認めているのかどうかの疑義が生じている。保健所に開業を届出る場合、施術所を開設している場合は「開設届」を、出張専門の場合は「出張業務開始届」を提出します。この「出張業務開始届」には、「開設届」とは異なり、施術者の氏名しか記載する項目がないではないか。すなわち、法人名を記載する欄がないのだよ。疑義内容:受領委任の取扱いでのあはき療養費について、支給後において何らかの不備・齟齬・欠陥又は不正請求の判明等で支給済みの療養費の返還義務は、施術管理者が出張専門業者であっても、その責任は開設者(オーナー)にも及ぶか否か。また、その法令上・通知上の根拠如何?
法人に雇用されている出張専門施術者が受領委任を地方厚生局に申出する場合、申出書面である「療養費の受領委任の取扱いに係る申出(施術所の申出)別添1(様式第2号)」の施術所欄に(出張専門 □ )にチェックを入れるのだが、開設者欄に雇用主名を記入することができない。なぜなら保健所へ提出した「出張業務開始届」の控えを添付し、それをもとに(様式第2号)を記載するため、記載が無い開設者を記入することができないからである。厚生労働省保険局医療課から発出された療養費の取扱いに関する疑義解釈資料によれば、
(問29)出張専門施術者は、法人等に雇用されている場合であっても、必ず自ら施術管理者として地方厚生(支)局に申し出る必要があるか。
(答) 当該法人等が施術所を開設している場合、当該法人等(開設者)において、当該出張専門施術者を施術所の施術者として保健所に届出のうえ、受領委任については、施術所の勤務する施術者(又は施術管理者)として地方厚生(支)局に申出を行うことが適当である。また、当該法人等が施術所を開設していない場合、当該出張専門施術者が出張専門として自ら保健所に届出のうえ、受領委任については、自ら施術管理者として地方厚生(支)局に申し出る必要がある。なお、その場合、複数の出張専門施術者が法人等に雇用(又は業務委託)されている場合であっても、各出張専門施術者がそれぞれ施術管理者として申し出ることとなり、当該法人等の所在地にかかわらず、各出張専門施術者の住民票の自宅の住所をそれぞれ施術所の所在地とみなして取り扱うこととなる。(取扱規程第2章の10)と回答されているのだ。
保健所の「出張業務開始届」は、受領委任が開始する相当以前、昭和23年1月から施行された【あはき法(法律第9条の3) 様式4号】当時から存在する書式であると認識している。受領委任の取扱いが平成31年1月1日より開始された理由だけをもって、「出張業務開始届」にそぐわない開設者名や雇用者名の記載欄を設けることができなかったと想像するのだ。出張業務開始届を提出して業を行なう「あはき出張専門施術者」は個人事業主の取扱いにもかかわらず、以前から法人に雇用されている実態があり容認されていた現状があるのではないか。それらの現状を追認したことが同じく受領委任での疑義解釈資料に記載されている次のQ&Aで読み取ることができるのだ。
(問138)往療内訳表の「往療の起点」欄について、例えば、出張専門施術者が法人等に雇用(又は業務委託)されており、当該法人等が施術所を開設していない場合であって、出張専門施術者が自宅から当該法人等の所在地に移動し、当該法人等を拠点として各患家に赴いた場合、往療内訳表の「往療の起点」欄に記入する住所は、出張専門施術者の自宅の住所でなく、実際に患家あてに出発した当該法人等の所在地となるか。
(答) そのとおり。往療内訳表の「往療の起点」欄に記入する住所は、往療料の金額(4km以下・4km超)の算定の基準となる実際に患家あてに出発した住所を記入する。ただし、出張専門施術者は、それぞれが施術管理者であり、当該法人等の所在地にかかわらず、各出張専門施術者の自宅の住所をそれぞれ施術所の所在地とみなして取り扱うため、出張専門施術者の自宅の住所から患家の直線距離が片道16㎞を超える場合、原則、施術料及び往療料の支給は認められない。また、往療料の支給は、往療内訳表に記入した「往療の起点」から「施術した場所」までの距離(原則直線距離で計測)にかかわらず、出張専門施術者の自宅の住所と患家との直線距離が上限であることに留意する。(取扱規程第4章の24(7)、様式7号)とあることから、出張専門施術者が自宅から当該法人等の所在地に移動し、当該法人等を拠点として各患家に赴いた場合との記載から、これを読み替えると、勤務先の事務所に出勤すると読み取れる。しかし、往療算定は法人拠点(事務所)から算定するも往療の最大の16㎞は施術者の自宅からとされている。事務所に出勤しているのなら施術所に出勤して勤務している実態と何ら変わらないような気もするのだが、どのような違いがあるのかがよく分からない。
出張専門施術は自宅を拠点にあくまで個人で行う施術である。保健所への届出も「出張業務開始」ということで自宅住所を届出る性質のものであるのが明らかだ。「出張業務開始届」が個人としての取扱いなら、地方厚生局の受領委任の取扱いに係る申出でも、必然的に個人の取扱いとなると思われる。ところが保険局医療課から事務連絡として示された疑義解釈資料では、個人の取扱いにもかかわらず、疑義解釈のQ&Aにおいては雇用されている実態を追認して解釈が行われている実態にあるのだ。
しかしながら、雇用主(法人)の不正等の返還等に関しての責任は言及されてはおりません。仮に、開設者であるオーナーがはり師・きゅう師・マッサージ師を雇用してビジネスを行うとしたならば、敢えて施術所を開設せず、出張専門の施術者を雇用したほうが、設備投資も必要なく、さらに、現行では往療料を算定しなければ施術料単独での算定も可と運用上は解釈されている。そのうえ不適切な療養費申請を行った場合であっても、開設者であるオーナーへの責任は追及されないのであれば、経営者にとってはありがたい制度であるといえよう。
この件を近畿厚生局長あてに書面で疑義照会をするが、おそらくは書面での回答は得られないだろう。