あはき師及び柔整師等の広告に関する検討会の構成員に対してガイドラインに関する当方の意見書を発出しました

あはき師及び柔整師等の広告に関する検討会の構成員に私ども全柔協が構成員の委嘱を認められていません。残念ですが、近々に開催が予定されている第9回の検討会前に、当方の意見を書面で各委員の先生方にはお伝えします。
書面内容を参考までに全文を掲載します。
私どもがやっているのは「治療」であります。法律的には医師法の一部を限定的に解除されたのですから、治療行為の一環であって、決して医業類似行為ではないのですが、13名の構成員の方々が、そもそもあはき・柔道整復を医業類似行為としているから、施術で十分だとか、治療という表現を使わせないとなるのです。

私は鍼灸師や柔道整復師が行っている施術行為はまさに「治療」だと考えますが、健康保険という医療保険から排除・排斥したい者は施術で十分だろうと考えます。その先には「治療ではないのだから保険ではない⇒施術だから自費でいいのではないか」との流れを作りたいのです。
先ずは、柔道整復療養費の受領委任の取扱いを保険者裁量により償還払いへ移行させる取組みには、このような些細なこともきわめて重要な要素となってくるのです。皆さん「賢い人」ばかりですね。



                                                     全柔協専発02171

令和 2年 2月17日

あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び

柔道整復師等の広告に関する検討会 構成員 各位

公益社団法人 全国柔整鍼灸協会

                           理 事 長  岸 野 雅 方

広告ガイドライン施行後に生じ得る法律的問題・疑問に関する意見について

私ども公益社団法人 全国柔整鍼灸協会(以下、「当方」という。)は全国に4,200人を超える柔道整復師及びはり師、きゅう師、並びにあん摩・マッサージ・指圧師の国家資格の免許を有する会員で組織される公益社団法人であり、療養費の申請にあたっては、国が契約に係る受領委任の取扱いを通知により運用し始めた昭和63年以前より、患者とともに代理受領を「全国柔整師協会」として委任払いを実行して参りました。

また、公益事業部門の実施にあたりましては、柔道整復師、はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師の施術に係る後方支援として施術を受ける患者さんのお力になれるよう、日々活動しているところです。

 さて、厚生労働省医政局医事課が事務局を務める「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」におかれましては、平成30年5月10日の第1回開催から議論を重ね、令和元年11月14日の開催まで、実に8回の検討会が開催されてきたところであります。

 当方からは、残念ながら施術者の意見を反映させる者としての構成員の委嘱を受けることは叶いませんでしたが、毎回必ず傍聴させていただきました。

第8回までの検討会での議事録及び配布資料等から、近々にも策定され、厚生労働省医政局長通知として発出されるあはき業若しくは柔道整復の業務又はこれらの施術所に関して広告し得る事項等及び広告適正化のための指導等に関する指針(以下、「本件ガイドライン案」という。)に対して、第8回の検討会「資料1これまでの議論を踏まえた広告ガイドライン(案)の作成方針について」及び議事録により、下記のとおり当方の意見をまとめました。

今月中にも開催される第9回の検討会の席上での議論の参考にしていただければありがたいです。

1はじめに

施術所等の広告は、あはき師法第7条第1項第3号及び柔整師法第24条第1項第2号において広告が認められる事項が定められているが、本件ガイドライン案では、広告が可能とされている事項についても、その内容が虚偽又は誇大な広告に該当し関連法令、指針に抵触するもの及び品位を損ねる内容であり、あはき師・柔整師の広告としてふさわしくないものは禁止されるべきものとなることが想定される。

広告の規制について、上記の限度であれば、何ら異論はないと思われるが、本件ガイドライン案では「基本的な考え方」として、

利用者が適切に施術所を選択するために必要かつ正確な情報の提供を確保する観点からの運用の留意事項を定める。

資格外行為により発生した事故の情報が相当寄せられていることなどを踏まえ、その広告の適切なあり方について定める。

施術所の名称等の基準については、医療機関と紛らわしい名称を用いない等を明確にするようにすることにより、利用者が適切な施術を受ける機会を阻害されないようにするとともに、利用者の安全を確保することが重要。

との項目を掲げて、解釈的に広告規制の内容を膨らませようとしたことから、検討会の議論は極めて分かりにくいものになり、その結果、本件ガイドライン案の内容について、一部の強硬な構成メンバーの意見を抑え切れず、利用者の視点からすると非常識と思われるいくつかの項目が残されている。

 ガイドラインが目的とする広告規制の整備について、その観点は、あくまで利用者・患者の保護でなければならず、業界内での競争原理を持ち込んではならない。

本意見では、そのうち、最も著しく適正さを欠くと思われる施設名称の問題を検討するものである。

2 施設の名称について

 本ガイドライン案では、施設名称について、「治療」という言葉を使用すること、「整骨院」と称することが不可とされている。本来、施設の名称については、法律で規制されない限り、憲法で認められている表現の自由の問題として、何ら制限を受けるものではない。しかし、本ガイドライン案では、これを「広告」として、「医療機関と紛らわしい名称を用いない等を明確にすることにより、利用者が適切な施術を受ける機会を阻害されないようにするとともに、利用者の安全を確保することが重要である」として、施設所の名称について規制を図ろうとしていることが窺える。

この中で、検討会では激しい意見の対立がありながら、本ガイドライン案に盛り込まれた、「治療」という言葉を使用した名称と「整骨院」という名称の禁止である。以下、個別に検討する。

(1) 「治療」という言葉を使用した名称については、「〇〇治療所」「〇〇療院」「〇〇はり科療院」「〇〇治療院」「〇〇鍼灸治療院」が、「医業」と誤解するおそれがあるものを含んでいる名称であるとして、広告として不可であるとされている。

  これは検討会においては医師、健康保険組合の立場から強く主張されていたものであるが、その理由は、① 昭和24年の古い行政通知で〇〇治療院、〇〇治療所は不可とされていたこと、② 治療という言葉は一般人にはまず医療機関、医師を連想される、③ 健康保険組合のアンケートでは85%が反対であり、患者が保険の治療と勘違いする、の3点であるが、これらの点については、同検討会でこの禁止に反対する側から以下の通り論破されている。

① 医療法第3条第1項は、「疾病の治療をなす場所であって、病院または診療所でないものは、これに病院、病院分院、産院、療養所、診療所、診察所、医院その他病院または診療所に紛らわしい名前をつけてはならない。」と規定しているが、「治療院」、「治療所」は例示されていない。

  この規定では、「疾病の治療をなす場所」という言葉が、医業、歯科医業に限らず、あはき業、柔整師業が施術を行う場所も含めていることが明らかである。「疾病の治療をなす場所」の意味が医業、歯科医業が医行為を行う場所の意味するものとすれば、医療法第3条第1項を定める意味がなくなってしまうからである。すなわち、あはき業、柔整師業が施術行為も治療の範疇に入ることを法律が認めているのである。

「治療」という言葉は、例えば昭和58126日に発刊された広辞苑第三版では「病気やけがをなおすこと。また、そのためにほどこす種々のてだて。療治」と記載され、また、平成元年1210日に発刊された新明解国語辞典第4版では「手当をして病気・けがを治すこと。また、その手当。」と記載されている。国語辞典がその編纂された時代の一般国民の認識を反映しているものとすれば、上記発刊の時点では、一般国民は、「治療」は医師の治療だけを意味するものではないことを認識されていたものと推定され、直近の版でも同一記載であり何ら変更されていないことから、現在においても然りである。

8回検討会で、石川 英樹 構成員が示しておられるように、1000人のアンケート調査で治療院という言葉で医師がいると思う人はごく僅かであるという調査結果があるということであり、上記国語辞典の語彙の信用性を裏付けている。厚生労働省において本ガイドライン案において、「医業」と誤解するおそれがあるものを含んでいる名称であるとして、「治療」という言葉の禁止を強行されたいのであれば、国民一般と言える数でのアンケート調査を実施すべきである。

「治療」という言葉は、それだけでは何の治療であるか分からない用語であるから、一般的に、治療院、治療所の前に業態を表す言葉をつけることが普通である。例えば鍼灸治療院、指圧治療院、整骨治療院、接骨治療院等の名称がつけられている。この点は医師の名前や地名だけをつけて○○医院、○○病院という名称だけで医行為を行う場所と分かる医業とは大きく異なる点である。従って、一般国民からすれば、あはき師・柔整師の施術所に「治療」という言葉を用いたとしても、これを医業を扱う場所と誤解することはまずあり得ないのである。

 ⑤ 最も重要なことは、あはき師・柔整師の有資格者自体が、施術行為を治療として認識していることである。あはき師・柔整師は、医行為ではないが、医師の医行為と同じく、人体に危害を及ぼすおそれのある行為をする資格を有するものであり、「治療」行為は医師の特権ではない。

(2) 同じく施設の名称として本ガイドライン案では柔整師について〇〇整骨院を不可とした。

この理由は、不明確である。本ガイドラインの記述では、これも「医療機関と紛らわしい名称を用いない等を明確にすることにより、利用者が適切な施術を受ける機会を阻害されないようにするとともに、利用者の安全を確保することが重要である」ということが理由となるが、何故そうなのかの説明はない。

検討会で、この禁止を主張する構成委員からは、「整骨」という言葉は意味不明で国民に分かり易く、正しく認識してもらうことが大事だ、「整体」や「整形外科」と混同する、という程度の意見しか出ていない。施術所を整形外科と間違える国民がいると本当に考えているのであろうか。

 しかし、この「整骨」という言葉についても、昭和58126日に発刊された広辞苑第三版では「ほねつぎ。接骨。」と記載され、しかも用語例として「整骨院」が挙げられている。また、平成元年1210日に発刊された新明解国語辞典第4版では「骨つぎ。」と記載されている。すなわち、上記発刊の時点では、「整骨」という言葉は「骨接ぎ」、「接骨」と同義として一般国民の間で使われていたということである。意味不明でもないし、「骨接ぎ」、「接骨」よりも国民には分かり易いとも評価できる。 

また、第8回検討会において、三橋 裕之 構成員から、北海道、大阪、福岡の調査では、整骨院の名称を使用している柔整師の施術所が43%を占めていることが報告されている。

今や、整骨院は資格のある柔整師の施術所として国民の間で定着しているのである。

3 本ガイドライン案の施設名称についての以上の禁止を実際に実施するとすれば、以下の法律的問題が発生すると思われる

  1.  施設名は、表現の自由として、法律で規制されない限り、どのような名称をつけることができる。現在、名称については、広告ができることが出来るものとして施術所の名称が挙げられているだけである。

    ただし、虚偽、誇大な広告、品位を損ねる広告に該当する場合には、不正競争防止法、独占禁止法、刑法等の別の法律で規制されることはあり得る。

  2.  ガイドラインは、法律ではないから強制力はない。従って、単に指導ができることに留まるが、上記のような法令違反がある場合は告発することもあり得る。

     しかし、本ガイドライン案では、当該ガイドラインは強制力はないとしながら、単に指導にとどまらず、「受領委任」の取扱いについて地方厚生局等への通知をすることが提案されており、事実上の強制措置が用意されていることになる。

  3.  従って、仮に、本ガイドライン案において、事実上の強制措置を背景に施設の名称について不合理な禁止措置を講じた場合、その名称を使用してきた施術所から国家賠償請求等の訴訟が提起されることがあり得ることは想定しておかなければならない。

     本意見書で検討した「治療」という言葉を用いた名称、「整骨院」という名称については、その禁止は何らの合理性も見出されない。

  4.  なお、将来において、名称について法律の整備をするとすれば、その場合には、弁護士法、医師法のように、何らかの施術所の名称を定めて、これについては名称独占とすることが望ましい。これらより、無資格者との差別化となり、国民にとっても、無資格者の施設との違いが明確になって、「利用者の安全」が確保されることになる。これには、あはき師・柔整師の有資格者側も反対しないと思われる。

     以 上

  


by ueda-takayuki | 2020-02-17 11:36

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