療養費同意書交付料100点。現在、せっかく医師が同意書を交付しても、支払基金の裁量権によって交付料が不支給になっている事態

この医科に支払われる「同意書交付料」が原点されるような環境ですが、その理由などを解説してみたい。

 最近では、医師の方から「同意書を書くのはもうやめます」という趣旨を患者さんやわれわれ施術者に宣言し、患者さんらが混乱している。社会保険診療報酬支払基金や国保連審査会による独自の裁量による交付料の不支給・減額査定が原因だが、そもそも同意書交付料算定の本来の意義はなんだったのか。どのような経過で「療養の給付」の分野に保発20号を設定できたのかだ。医師や鍼灸師らの如何なる動きがあったのかについて、まず初めに解説しておこう。平成8年当時の改定は、平成7年12月の中央社会保険医療協議会の意見を踏まえて療養型病床群の整備の促進、急性期医療と長期療養の適正な評価、病院・診療所の機能分担の推進等診療報酬の面から医療機関の機能分担と連携を積極的に推進するとともに、薬価の算定方式の見直しと併せて医薬品の適正使用や適正な医薬分業を推進する診療報酬上の措置を講ずることにより(なんだかよくわからないいが)、薬剤費の問題について構造的な施策を講ずる等、診療報酬の合理化に取り組もうとするものであることが主眼であったのだ。そのなかでも、患者の医療ニーズの高度化等に対応するため、患者に対する情報提供を推進するとともに、患者の選択を前提に特定療養費制度の活用を図ることとすることにも着目することとなったことから、療養費同意書交付料の算定を「指導管理等」の11番目の事項として「療養費同意書交付料の新設―はり、きゅう、あんま、マッサージに係る療養費の支給申請に必要な同意書等の円滑な交付を図るため、交付料100点を新設した」ことを盛り込むことができました。通知発出にあたっては、業界団体からの要望として、従来より、「医師が同意書を交付し易い環境をつくる」ことに応える形で、実際に同意書を書いたなら医師の診療報酬として1,000円の収入になれば同意書交付がすすむのではないかと期待されたものであった。これは同意書交付にあたって有益なものであったのは事実である。しかし近年、平成14年に鍼灸療養費に係る期間・回数制限も撤廃された結果、同意書発行の円滑化に危機感をもった地元県・市の医師会のうち、整形外科医を中心とした取組みにより、「鍼灸院に取られた患者を取り戻そう!」と患者さんの医科への奪回運動が始まった。その取組みの一つがまさに診療報酬支払基金や国保連における審査にあたる外科・整形外科委員による「療養費同意書交付料の減額査定」であるといってよい。

この動きは特に平成19年末頃から強化され、その後全国的に拡大していき、現在も行われている。支払基金審査会審査結果による減額となったことを受け、医師から鍼灸マッサージ施術の受療患者に対し、「同意書を発行しない」旨の事例が急激に増加してしまった。診療報酬支払基金が同意書交付料を認めない理由としているのは、保険医療機関及び保険医療養担当規則第17条に記載のある「保険医は患者の疾病又は負傷が自己の専門外にわたるものであるという理由によって、みだりに、施術業者の施術を受けさせることに同意を与えてはならない。」のことを主張しているが、そもそもこの規則は保険医の診療方針を述べたものであって、“自己の専門外”を理由にみだりに同意してはならないということ。

しかし支払基金等の審査員は、『鍼灸治療を知らないことを理由に同意をしてはならない⇒鍼灸治療を理解していなければ、更に付け加えれば、鍼灸に詳しくなければ同意をしてはならない』と意図的に都合よく解釈し、特に内科医や小児科医の同意書交付料を減額査定しています。この療担規則17条を根拠に終いには、「鍼灸同意を自粛するよう国が求めている」なんて、まったく見当外れなことを言っている地元の医師会も事実存在している。しかし、療養費同意書交付料の減額査定の動きは益々増大する傾向にある。私、上田が直接交渉しても、「減額査定は審査員である私たちの権限である」との主張を繰り返され、何らの解決にも至っていない。愚かな審査委員が多過ぎる。

鍼灸施術に対する同意書交付料について医科レセプトが減額されるポイントは、初診日と同意日が同日又は近日であって、療養の給付が行われた時間的な幅が少ない場合に集中しているのが目立っているのだ。

医科向けに出されている医科点数表の解釈の解説中に、療養費の支給対象となるものが「慢性病であって医師による適当な治療手段がないもの」との保発第32号通知を載せて、しかしながら、あえてこれを受けての運用上の課長通知である「6疾患について保険医より同意書の交付を受けて施術を受けた場合は、医師による適当な治療手段のないものとし療養費の支給対象として差し支えない」を、逆に意図的に掲載しないことに原因があるのだ。つまり、厚労省としては、療養費の支給申請にあたって、保険医が通知に示された6疾患に同意すれば療養費の申請上は何ら問題ないと通知したのであるが、医科レセプトの同意書交付料を減額査定するのは支払基金や国保連合会の「審査委員の権限」だと豪語する始末である。

療養費関係の諸通知では先行医療(鍼灸施術前に医師の療養の給付が行われたという実績を求めること)の概念はまったく不要であり、これを定めた通知自体が平成16年に廃止されているのだが、それにもかかわらず医科レセプトの審査をするドクターは相変わらずの医療行為の実績に終始して、初診日と同意書交付までのタイムラグに固執している。審査委員の判断によれば「初診日から一定期間の時間が経過していなければ同意書交付料算定を私が認めない」などと豪語する者も実際にいる。

同意書交付料減額査定は鍼灸施術同意に係る減額のみならず、あん摩マッサージ施術にも波及していくことになる。変形徒手矯正術に関する医師の同意書は1か月ごとの申請の度に同意書の添付を要する扱いだが、これもまた減額の対象とされているのが実態だ。減額理由は鍼灸の場合と異なり、「なぜこれだけ長期間の施術となるのか。これだけ長期間の施術期間であれば、すでに症状固定の段階にあり筋麻痺・片麻痺あるいは関節拘縮の緩解作用には効果が期待できないので同意書発行は如何なものか?」との理由である。

これら同意書交付料の減額査定は、査定された医師に対する「非礼な行為・無礼な行為」であることから、同意医師が怒り反論し、減額査定分1,000円を取り戻すための「再審査」に臨むべきだ。しかし残念ながら、実際には同意医師はこれら支払基金や国保連にはけっして文句を言わず、むしろ同意書をお願いした私たち鍼灸師・マッサージ師や患者さん本人に対し不平不満をぶつけてくる。「鍼灸マッサージに同意書を書くとロクなことにはならない!」と。不条理だ。こんな同意医師の対応もなさけないが、これが現実なのである。


by ueda-takayuki | 2017-05-16 11:49

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