日本毛織健保組合は一部負担金の10円差の発生が理解できないという

不備返戻の理由を明らかにした日本毛織健保組合作成の『再調査のお願い』によれば、患者が窓口で支払うべき一部負担金額について、徴求金額が450円とすべきところ、実際に施術所が患者から受領した一部負担金額が460円であることを確認した結果として、一部負担金額に10円の相違があることを理由としたものだ。このことについて、当方の見解を当方担当部局より日本毛織健保組合の外部点検業務委託先宛に説明したが、保険者としての了解が得られないということなので、再度、健保組合宛に取扱いについて説明した。一部負担金の取扱いについての厚生労働省保険局医療課長通知に示された算定基準の実施上の留意事項第7一部負担金2のなお書きによれば、「なお、保険者又は市町村(特別区を含む。)が支給する療養費又は医療費の額は、10円未満の四捨五入を行わない額であること。」と明記されている。本件事案により具体的に説明すれば、施術の費用総額である1,515円の7割相当額である1,060.5円にかかる10円未満の四捨五入を行わない額であることから、保険者が支給する療養費の額は当然1,060円となる。そうすると、一部負担金額は、施術費用の総額である1,515円から1,060円を差引いた金額である455円となり、健保組合の主張するように、これを450円としてしまうと10円未満の金額である5円分が四捨五入により10円となるわけだが、この10円の存在が消滅してしまう。このようなことを避ける為、国の会計にかかる法律として「国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律」(昭和二十五年三月三十一日法律第六十一号)が規定されているのだ。当該法律を健康保険法に限定して考えると、健康保険法第181条第一項に規定のある延滞金に関する取扱いについては適用除外となっているが、療養費については当該法律の適用を受けるのは明らかである。そうすると、この法律に基づき、本件の場合、保険者が支給する療養費の額は1,060.5円から一円未満の端数を切り捨てた1,060円となる。結果として一部負担金は454.5円の端数を切り上げた455円となり、窓口負担は455円の10円未満を四捨五入することから460円となり、施術者の一部負担金の徴収にはなんら不備はないのだ。
確かに、厚生労働省保険局医療課長通知に示された算定基準の実施上の留意事項第7一部負担金の1及び2によれば日本毛織健保組合がこのような考えに至ることも感情的には理解できる。しかし、2のなお書きを熟読すればやはり当方の主張に正当性があるものと考えるのだ。以上のことから、本件については不備返戻の理由がないことから、健保組合におかれては関係部局にきちんと確認を取って、行政の判断を仰ぎ、すみやかに支給決定してほしい。いずれにせよ、施術者ならびに患者さんにとっては何の不備もないことから、今後同一事由による返戻は止めてほしい。国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律は柔道整復師の療養費の金額決定に適用される。これはなかなか難しい問題だ。地方厚生局の担当者にも理解していない者がいるので、健保組合には解りづらい点も多いだろうと推察する。
by ueda-takayuki | 2014-06-27 11:07

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