民主党の統合医療を普及・促進する議員の会柔道整復師小委員会あてにいわゆる白紙委任問題に係る提案を行う

民主党の統合医療を普及・促進する議員の会柔道整復師小委員会事務局から「いわゆる白紙委任問題に係る提案」を求められたので、全柔協から2点提案を行った。具体的には
(一)負傷部位が明記された領収書の交付を、一部負担金受領の都度、必ず義務付けること。
(二)明細書の交付料を患者負担とせず、交付料金を療養費の算定対象とすること。
である。参考までに、回答文書を掲載する。
全柔協専発0127第1号
平成26年 1月27日
民主党統合医療を普及・促進する議員の会
柔道整復師小委員会事務局長 大 島 九 州 男 様
全 国 柔 整 師 協 会 
専務理事 上 田 孝 之

柔道整復施術療養費に係る署名に関する改善提案の募集について(回答)

標記の件につきましては、平成25年12月24日付「いわゆる白紙委任問題」の改善提案の募集についてと題されたご案内をいただいたところです。当方といたしましては、決して「白紙委任」との認識には立っておりませんが、貴職の掲げる問題については了知しているところです。
このことにつきましては、過去に3度に渡って厚生労働省保険局とも交渉を重ねてきたところですが、具体的に進捗に至っておりません。このことから、従前までの当方の主張を踏まえて貴職からのご案内に下記のとおり回答させていただきますので、対応方よろしくお願いいたします。

                   記

柔道整復師の施術の療養費(以下「柔整療養費」という。)の適正化への取組の一環として、標記にかかる保険局4課長連名による通知(以下、「通知」という。)が発出されました。これは保険者が行うべき取組や留意事項を具体的に示すことを目的とした通知であることは理解できます。しかしながら、通知された記載内容の一部について、業界団体及び施術者として理解できない点や納得がいかない点がございます。これらの不明な点や柔道整復業界としてこのままでは保険者からの指導(当該通知の解釈による)ということで、患者と施術者との間に大混乱が生じるおそれがあります。先ずは一番大きな問題点であると思われる「自筆署名をするタイミング(いわゆる白紙委任問題)」」に限局して、この点についてのみ下記のとおり問題提起の上、当方の改善提案策をご提示いたします。

1.療養費支給申請書の内容(負傷原因、負傷名、日数、金額)をよく確認して、署名または捺印を求めていることについての当方の基本的考え方について
1 通知の3.保険適用外の施術についての被保険者等への周知徹底の事項において、周知の具体的記載事項の活用としてのパンフレット、別添3-2「医療費の適正化のために」の2番目の項目には、施術者としては当該記載内容の運用上、対応が不可であると言わざるを得ない。

○療養費支給申請書の内容(負傷原因、負傷名、日数、金額)をよく確認して、署名または捺印をしてください。
※受取代理人の欄への署名は、傷病名・日数・金額をよく確認し、原則患者本人が署名することになっています。よく確認をせず、受取代理人の欄に署名することは、間違いにつながるおそれがありますので、注意してください。
この記載内容によれば、あくまで初回に署名することは否定されてはいない。しかし、傷病名・日数・金額をよく確認した上で署名することとなっているため、署名は「治療の最終日、若しくは月末にしなければいけない」とも読み取れる表現である。このような表現のパンフレットで周知徹底されると、従来どおりの署名の仕方では、患者との間に無用なトラブルが生じる可能性が大きい。

2 患者の都合で急遽来院せずに施術が中止となった場合、「署名がいただけないこと」の理由を施術者が記入することでの支給を可能としていただきたい。

3 厚生労働省ではこの署名のタイミングについては10数年も以前から議論されていたことは承知しているが、その歴史的背景を今般、全く無視されているように思われる。療養費の署名は、患者(例えば子供)に被保険者・世帯主の氏名を書かせる仕組みであり、小さな子供に申請書の内容を確認させた上で署名をせよというのも酷である。
保険者は患者本人の自筆署名にこだわるが、そもそも署名欄に患者が署名する氏名自体が被保険者・世帯主の氏名であって、患者本人の氏名を書かせるのではない。これは、療養費の申請があくまで被保険者・世帯主に限定されていることから、受領委任の取扱いの形式論に起因する、すなわち形式を単に整えるだけの実務的方便に過ぎないものであると思われる。

4 受領委任の患者本人自筆署名とはいえども、実際は患者の氏名を書かせるのではなく、被保険者・世帯主の氏名を書かせることが形式論に固執する方便であることは既に述べたが、ここで患者自筆署名が現実の運用として不可能であることを国が認知している証左として、平成19年10月2日に辻泰弘参議院議員から提出のあった質問主意書に対する平成19年10月9日付送付の内閣総理大臣福田康夫の答弁書の答弁に見て取れる。
答弁書 内閣参質一六八第一五号
療養費の支給については、患者から施術者への受領委任(保険者と柔道整復師により構成される団体又は柔道整復師との間で契約を締結するとともに、被保険者が療養費の受領を当該契約に係る柔道整復師に委任することをいう。以下同じ。)の制度が認められており、柔道整復師の施術所がその申請書を作成するのが一般的である、当該申請書については、療養費は一か月を単位として請求されるものであり、当月の最後の施術の際に患者が一か月分の施術内容を確認した上で署名を行い、これを作成することが原則であるが、柔道整復師の施術所への来所が患者により一方的に中止される場合があること等から、患者が来所した月の初めに署名を行い、当該申請書を作成する場合もあることは、厚生労働省としても承知している。
と答弁されており、政府として月初めに署名を求めた上で申請書が作成されていることを承知している。
そうすると、申請書に月単位で施術内容が書かれていない段階での作成を国として承知しているということから、本答弁をもって患者が自筆署名を行う時期についての運用上の理解は為されたものと業界では理解したところであった。
 しかしながら、この点について承知していると答弁しながら、再度、「署名は月の最後の施術を受けた日に、療養費支給申請書そのものに書かれてある内容の確認、すなわち申請書そのものを見せた上で確認をさせることを強要していることを求めるかのように読める。そのようなことは申請書の作成にあたっての運用上不可能なことである。患者は必ずしも月末まで来院するとは限らず、月内の最終通院日を施術所側で把握することはできない。また、通院日が数回、極端な場合は初回一回のみということもある。そうすると、どのタイミングで署名をさせるかは個々の事案により相違するわけであり、そのための対応策として、従来から、初めての来院時(初検)においての一部負担金の窓口での徴収後に申請書に署名を受け、翌月以降は月初の来院時に一部負担金徴収後に署名を受ける。これが受領委任の取扱規程に従った全くもって妥当適正なものであると考える。

5 現実の実態論を無視してでもあくまで「申請書自体に書かれた内容をよく確認してからでなければ署名してはならない」とするならば、療養費支給申請における大原則である「施術にかかる費用を負担する度ごとに」すなわち、一部負担金を徴収するたびに1日ごとに、施術した日ごとに申請書への署名を求める事務処理となる。そうすると、月15日施術を行った場合は、15枚の療養費支給申請書を提出することになる。受領委任の取扱規程上、申請書の提出は月単位で行うこととされていることから、月単位での請求を改め、申請書の内容を確認できた段階で、月に何度でも申請書を小出しに提出できるように改めなければ不可能である。また、月単位の運用を改めた場合の保険者・審査会における事務の煩雑さは激増することが明らかである。
  そもそも「療養費」の請求の原則論は治癒請求であるものと承知しているところである。

6 通知で示されたパンフレット周知記載の意味するところは、「申請書そのもの自体」ではなく「申請書の内容」、つまり①負傷原因、②負傷名、③日数、④金額を何らかの形で患者に確認させた上で(申請書に書かれた①~④ではなく、他に確認できる方策により確認させることを含む)署名をもらえばいいということであると読み取れる。例えば、負傷名と日数と金額については、施術をした部位、頸部や腰部や足首といった患者が理解しやすい施術部位を記載した領収証(日付と総金額、一部負担金も記載)を施術終了の都度発行することで患者はその内容を確認することができるが、このような対応でも「了」とされるべきであることを提言したい。

7 当該通知を理由として保険者自らが、又は保険者から委託を受けた外部委託点検業者が、患者宛てに照会した照会中、「療養費支給申請書の申請書面に書かれてある内容を月の最終通院日に確認しましたか?」との記載について、患者が「月の最終通院日ではないとの回答欄にチェックを入れたことをもって、大量に不備返戻されたなら、この返戻は保険者と施術者側において無用なトラブルに発展するので問題である。また、この場合、どのようにすれば療養費が支給されるのか。返戻されても施術者側では対応策がないが、具体的にどのようにすればよいのかの具体策を見出せないのは、運用通知として劣悪であることから容認できない。

8 受領委任の取扱いに係る保険局医療課長通知の別紙(平成25年4月24日付保医発0424第1号)によれば、受取代理人の欄の記載としては、「患者から受領委任を受けた場合は、『受取代理人』欄に患者の自筆により保険者の住所、氏名、委任年月日の記入を受けること。利き手を負傷しているなど患者が記入することができないやむを得ない理由がある場合には、柔道整復師が自筆により代理記入し患者から押印を受けること。(患者が印を有さず、やむを得ず患者のぼ印を受けることも差し支えないこと。)」とある。すなわち、受領委任の取扱いにおいては、患者が自筆で記入することができない場合の取り決めしかないが、申請書そのものを確認して署名をすることなど一切決められていない。当該通知において、患者が申請書そのものを確認して署名をすることを求めるのであれば、その求めることができる法的根拠は何かについてまったく明らかにされていない現況にある。

2.署名問題に関する基本的なスタンスについて
月の最後の施術日に、作成された療養費支給申請書を見て、その内容をよく確認してから署名することなど、物理的にできないことである。申請書を月末の最終施術日に作成して患者がその申請書面に書かれている内容を確認した上で署名をするということにするのであれば、現行の月末締めで翌月10日までに提出という運用は不可能である。
月途中で治癒した場合や月途中においてその後来院してこない患者に対する対応はどうすれば良いのかを明示していただけないと、単に「努力せよ!」といわれても対応の余地がない。後日、別途署名のために患者宅へ赴くとか、また郵送にて対応しろということであれば、その交通費や郵便料金は誰が負担するのかが不明である。受領委任の取扱いでは、その事務手続き上、初診時や月初めにサインさせるしかないと考えるところである。
過去において、実際に太陽生命健康保険組合など保険者によっては提出済みの療養費支給申請書全件を不備返戻とし支給決定を拒んでいた実態もあった。
これは受領委任の取扱い上の根幹を揺るがす大問題である。医科の保険証の取扱いでも初診時や月初めに保険証の提示を求めていることからも、このタイミングで署名させるしかないと思料するところ。通知の記載内容によれば、あくまで初回に署名することは否定されてはいない。しかし、傷病名・日数・金額をよく確認した上で署名することとなっているため、署名は「治療の最終日、若しくは月末にしなければいけない」とも読み取れる表現になっている。このような表現のパンフレットで周知徹底されると、従来どおりの署名の仕方では、繰り返し述べるが、患者との間に無用なトラブルが生じる可能性が大きいと考える。

3.結語 具体的な改善策の提案
 以上のことから、具体的な対応策について提言する。
(一)負傷部位が明記された領収書の交付を、一部負担金受領の都度、必ず義務付けること。
(二)明細書の交付料を患者負担とせず、交付料金を療養費の算定対象とすること。
〔解説〕
平成22年6月30日付厚生労働省保険局医療課事務連絡によれば、問21の回答として患者本人から領収書交付について「不要」の申し出があった場合は発行義務が免除されるが、これを廃止し、一部負担金の受領の際には必ず領収書交付を義務付け例外を認めないこととした上で、領収書内に施術を行った部位の特定をも義務付ける。このことにより、領収書を受け取った患者は、自身の施術に関する「支給申請書の内容をよく確認して」の担保となり得ると考える。
併せて、現行患者から実費徴収している明細書交付費用について療養費の算定対象とすることにより、多くの施術所において明細書の発行が実現する。明細書においても療養費支給申請書の内容確認に資する情報が得られることから、これも「支給申請書の内容をよく確認して」の担保となり得ると考える。
他の柔道整復団体は具体的な提案をしていないようなので、全柔協としての提案を行ったところだ。“内容をよく確認して”となれば、最終日での署名となるが、現実問題としては運用上は無理であることから、領収書の完全交付により代えさせていただくしか方策はないと思われる。
by ueda-takayuki | 2014-02-05 12:27

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