全国健康保険協会滋賀支部は“捻挫に拘縮は発生しない”との理由で返戻

全国健康保険協会滋賀支部の柔道整復審査会の審査委員から「捻挫に拘縮症状は発生いたしません。長期理由を正しく報告してください」との理由により返戻されたことに対し疑義を申し述べる。施術者は長期理由として、負傷経過において患者に肩関節周囲の拘縮が見られたことからその旨記載したまでだ。柔道整復師養成施設で教科書として使用されている『柔道整復学・理論編 改訂第5版』のP38によれば、関節運動障害としての拘縮が定義され、関節拘縮とは「関節を直接構成する組織以外の関節包、靱帯、筋、皮膚などの軟部組織が萎縮、収縮して、関節面の癒着はないが、関節可動域が制限されたもの」と記載されている。拘縮とは関節に存在する関節可動域が制限されている状態を指すものであり、骨折や脱臼に限定されない。また、拘縮には関節拘縮のほかにも皮膚性拘縮、結合組織性拘縮など、拘縮する原因別に分類できバリエーションがある。肩関節に肩関節周囲の拘縮が見られるものを柔道整復施術により関節可動域の拡大と疼痛除去を目的に行われた施術は有効であり、長期理由の記載として不適当と返戻されるのは誤りだ。肩関節周囲に見られる拘縮があったことから長期施術となったもので、肩関節に見られる捻挫の症状すなわち発赤・疼痛・機能障害・熱感・腫脹のいずれか又は全部が認められたので、施術者は捻挫と負傷名をみたて、施術を行ったまでである。次に、医科学及び学術的見地から「捻挫により関節拘縮が発生する」ことを解説するために、いくつかの文献を用いて説明する。まず、関節捻挫についてですが、関節に生理的可動域を越えた運動が強制された場合に関節構成軟部組織(靭帯、関節包など)の種々の程度に損傷をきたします。これを一般に捻挫sprainと呼ぶ。関節構成体間には解剖学的乱れはないものに限られる。関節包と靭帯の生物学的反応についてであるが、関節包と靭帯はコラーゲン線維束からなり、その長軸方向に牽引力が加わると伸張され、力が取り除かれると元の長さに短縮する。このばねのような弾性が、適切な関節可動域を許容している。同時に非生理的な方向への動きを抑制して、関節に動的安定性を賦与している。弾性体としての機能が障害されたとき、関節弛緩と関節拘縮という病態が発生する(標準整形外科学)。そしていよいよ拘縮についてであるが、拘縮(変形)は機能性拘縮と器質性拘縮の二つに分けられる。機能性拘縮はその大部分が疼痛性のものであり、疼痛を除去することによりその変形や拘縮を取り除くことができる。器質性の拘縮は大きく骨性のもの、軟部組織のもの、炎症性のものに分けられる。もし、原因が骨性の強直であれば手術的治療法以外に効果を得ることはむずかしいとされている。軟部組織由来のものであり、しかも陳旧性のものでなければ適切なリハビリテーションにより治療効果を上げられる可能性はある。リハビリテーションの効果があるのは軟部組織由来の拘縮であり、診察上よく遭遇する例としては外傷後の安静、固定等により損傷した筋、腱、靭帯、関節包等の軟部組織が癒着したり瘢痕を形成したりすることによる場合が多いものだ(整形外科学 改定第3版 社団法人全国柔道整復学校協会監修)。
そして、関節構成組織の変化による拘縮についてであるが、関節部を形成する結合組織のうち、靭帯は腱に近い密な結合組織であり、関節包ははるかに柔軟な弾力性に富んだもの。しかし、何らかの原因で関節の動きが制限されたままになると(関節内に炎症その他の変化がなくても)、わずか数日のうちに関節包は収縮して厚くなりはじめ、弾力性を失い始める。これはたとえば骨折によるギプス固定を2~3週行った後で、直接損傷を受けていない関節にも著しい運動制限がおこることからも分かる。肩については特にこのような結合組織の変化による拘縮が起こりやすい。この場合関節包を形成しているコラーゲン線維同士の結合が、固定=不動化によって、粗な結合から密な結合へと変化し短縮して弾力性を失ったものであり、それは一応可逆的ではあるが、回復には非常に長い時間を要する(標準リハビリテーション医学 第2版)。最後に関節拘縮とメカニズムについてであるが、関節拘縮の責任病巣には、関節の構成組織である関節包、滑膜、腱、靭帯、関節軟骨、皮膚、筋などである。初期における責任病巣は筋組織と関節包だ。筋肉内の結合組織は増加し、線維化する。関節では結合組織、とくにコラーゲンの架橋構造の変化によって拘縮が進行する。肢では肩関節は内旋位での拘縮を起こしやすく運動時に痛みを合併しやすいもの(最新整形外科学体系 4 リハビリテーション)。以上のとおり、捻挫は関節包、靭帯などの関節構成軟部組織損傷であり、その関節構成軟部組織に損傷が発生すると弾性体としての機能が障害され、関節拘縮を発生させる。また、肩関節は弾性体としての組織変化が起こりやすく関節拘縮を発生しやすい関節ともいえる。以上のことから、医科学的な見地からも、また、柔道整復施術の実態からも、協会けんぽ滋賀支部の審査委員会が返戻付箋において指摘される「捻挫に拘縮症状は発生いたしません」などと、まったくもって誤った言い分の即時撤回を求める。捻挫に拘縮症状は発生しないなどという誤った見解は滋賀県柔整審査会の統一見解なのか、それとも単に一審査委員の個人的見解なのか、また、単に個人的見解であるのであれば、その者の氏名及び経歴(何科を標榜する医師か、柔道整復師なのか、単なる事務にあたる者なのか)につき、書面をもって明らかにするよう求めた。いずれにしても、捻挫に係る長期施術理由に「拘縮」の使用が認められることから、再申請した。
           
by ueda-takayuki | 2013-12-06 16:17

上田たかゆきオフィシャルブログ


by ueda-takayuki
プロフィールを見る
更新通知を受け取る