療養費支給申請書に施術録の写しの添付を求められることについて反論

柔道整復施術療養費の支給決定に関して、健保組合や柔道整復療養費審査委員会等より、施術内容を確認するために施術を行った柔道整復師の施術録の写しを求められることがある。保険者等が施術録の写しの提出を求めている通知上の根拠は、柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項第6 施術録について 2「地方厚生(支)局長及び都道府県知事との協定及び契約又は関係通知等により、保険者等に施術録の提示及び閲覧を求められた場合は、速やかに応じること。」等によるものであるが、この規定は、保険者等であればすべからく、どのような理由であっても施術録の提示及び閲覧ができると解釈するものではなく、あくまで“地方厚生(支)局長及び都道府県知事との協定及び契約又は関係通知等により”という条件において、施術録の提示及び閲覧ができるということ。
 すなわち、受領委任の取扱規程に定めのある事項について、また、保険局長及び保険局医療課長の発出した療養費の算定基準等の療養費の支給金額に関する取扱い事項の範囲内において、提示及び閲覧ができるという旨の規定だ。
 具体的には、①受領委任に関する施術管理者としての疑義や勤務する他の柔道整復師に関すること、②受領委任の取扱いにかかる申出及び承諾、③指導又は監査、④被保険者資格の得喪関係の確認、⑤近接部位の算定等の療養費支給金額を決定するにあたっての実施上の取扱いに関すること等、契約と通知に基づいた運用により「提示及び閲覧」を求めることができる旨の規定である。
 従って、これ等に関する事項の確認のために施術録の提示及び閲覧を求められるのであれば、所定の手続きにより、この通知で示されたと判断される範囲内での提示及び閲覧には、速やかに応じる用意はある。但し、それは提示および閲覧ということであり、柔道整復師がその場で施術録そのものを差し出してご覧いただくことが提示であり、一方、閲覧となれば、柔道整復師の前で施術録の記載内容を調べながら読むことであり、当然施術録を持ち出したりすることもできない。提示及び閲覧とは、柔道整復師の面前で施術録を手にとって閲覧し、必要事項等を書き写すのは構わないが、それをコピーするとか写真に撮るということも許されていない。個人情報の保護や守秘義務等が厳しく問われる中、保険者等による患者の人権を無視するような形態による施術録の写しを求めるという安易な方法に反対する立場から、裁判所の命令書と患者本人の承諾がある場合を除き、施術録の写しの添付はできないものと考える。
 もちろん施術録をきちんと作成することは柔道整復師の義務であるから必ず作成しなければダメだ。面倒くさいから省略していますというのは、出るところに出れば認められない。むしろ柔道整復師にとっては保険請求の根拠を証明できる武器になるし、指導監査の席上では必ず提示を求められるのだ。
指導監査で提示を求められたなら拒否することはできない。
だからといって療養費支給申請書に施術録の写しを添付せよというのは別の話であり誤りである。医科に置き換えれば簡単に分かる。医科のレセプトである診療報酬明細書に診療録の写しの添付を求めたなら大問題に発展するだろう。また、カルテと言うものは治療法や施術の具体的なことが書き込まれることから、柔道整復師の知的財産の保護の見地からも、やはり施術録の写しの添付は認められないのだ。 
by ueda-takayuki | 2012-09-13 12:02

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