D健保組合の患者照会回答書に反論するため疑義照会した

D健保組合が行っている患者照会の文章は、外部委託点検業者が作成しているものでしょう。たくさんの誤りがありますが、確信犯であり、要するに柔道整復師の施術を患者が受けにくい環境をつくるのが目的です。記載内容が不備だらけなので、D健保組合理事長あてに反論の意味を込めて10項目の疑義照会を出して回答を求めています。ここでは参考までに疑義発出文章の要旨を以下に書きました。
D健保組合理事長様
【要旨】
柔道整復師の施術を受けたD健保の組合員及びその被扶養者に対する広報パンフレットの位置付けとして、併せて患者調査の一環としての回答書を患者さん宛てに送付されています。この2つの書面中に記載された内容は、運用通知である厚生労働省保険局長及び同局医療課長から発出された受領委任の取扱規程及び算定基準並びに算定基準の実施上の留意事項等の関係通知(以下、「通知」という。)に照らし合わせた場合に、明らかに妥当性を欠くものであって、不当かつ失当であります。柔道整復師の施術を受けることについて、施術を受ける患者さんの権利を妨害する記載も一部に認められることから、当方としたしましては強く抗議するとともに、下記に示した記載事項ごとに明解な回答を求めるものであります。
当方といたしましては、貴組合の広報パンフレット並びに患者回答書の記載内容の適否につきまして、行政や関係団体をはじめ、広く意見を求めていくこととしていることから、ご回答にあたりましては書面にてお願い致します。
1.柔道整復師(整骨院・接骨院)の正しいかかり方について
このような場合は整骨院・接骨院で健康保険が使われませんの中で
(1)「1.単なる疲れ、肩こり、腰痛、体調不良など」と記載されています。しかし、通知の表現では、正しくは「単なる肩こり、腰痛・筋肉疲労」となっていることから、単なる肩こりや単なる腰痛が保険対象外ということです。すなわち「単なる腰痛」が保険対象外ということになるので、この部分の記載は不正確であって患者さんの誤解を招くものです。
(2)「3.疾病からくる痛みやこりに対する施術」との記載は保険対象か保険対象外かを患者さん自身に判断させることになり誤りであると考えます。疾病に起因するかどうか、また、保険対象かどうかは施術者の判断に任されるべきです。
(3)「5.治癒の見込みのない長期間かつ漫然とした」とありますが、「治癒」の見込みがある、なしの判断も施術者がなすべきものであり患者さんが判断することではありません。「7.同時期に柔道整復師に施術を受けている場合」とありますが、柔道整復師の施術はいずれか一施術所のみ認められるなどという制限は設けられていないことから、この記述も誤りです。
(1)から(3)の点につきまして貴組合の明確な回答を求めます。
整骨院・接骨院で健康保険を使うときに注意することの中で、
「5.長期の場合は内科的要因も考えられるので医療機関で受診しましょう」という記載は、まさに被保険者の有する医療機関選定の自由を奪うことになるとともに、結果として、保険者として医療費の浪費に繋がるのではないでしょうか。これでは柔道整復師の施術を受けることを妨害あるいは抑制することを目的とし、保険医療機関へ患者さんを誘導していることを狙っているものと思われます。このことについての貴組合の考えを明らかにしてください。
2.整骨院・接骨院通院状況回答書について
  貴組合が患者さんから回答を求めるために送付されている「整骨院・接骨院通院状況回答書」の記載で、当方が不当・失当であると問題視している点を列挙いたします。
(1)被保険者氏名・受診者氏名欄において、押印を求める必要性がないこと。併せて続柄の欄も不要と考えます。政府が主体となって進めたガイドラインの見直しでも、本人サインがあれば押印は省略するのが常識です。また、健康保険の被保険者証でも続柄を求めないことが一般化していることから当該欄は削除されています。当然のことながら、保険者としては被保険者本人・被扶養者の区別は把握されています。なぜ押印を求め、続柄を記載させるかの理由を明らかにされたい。
(2)①の質問で、受診理由の★のコメント部分は、上記1.でも質問したとおり患者さんに症状の判断をさせています。傷病の状態や症状を判断するのは担当した施術者や医師が行うことではありませんか。なぜ患者さんに診断行為を求めるのかについての説明を求めます。
(3)④の質問で、①の回答が「いいえ」の判断のもとに、慢性疾患、慢性痛によるものと誘導し、その結果として病名を記入させる流れになっています。慢性病が療養費の支給対象外であることに着目しこれに誘導させることを目的とした構成になっています。これは意図的に設けられたと判断してよろしいか。
(4)⑥の質問で、治療内容に列挙されたマッサージ・鍼・電気・湿布・固定との列記のうち、柔道整復に関係あるのは固定くらいのものであって、柔道整復施術に関係ないものを並べている理由を明らかにしてください。柔道整復師の行う後療法等の手技的な処置等の選択肢が欠如しています。この点も柔道整復施術療養費の対象外との言質を患者さんから回答を求めるための誘導的な記述です。この点についての説明を求めます。
(5)⑦の質問で、治癒や中止という転帰に係る判断結果の年月日の記入を求められていますが、これも柔道整復師や医師が判断することであって、患者さんが判断することではありません。これはまさに柔道整復師という施術者の業務です。このことについての明確な説明を求めます。
(6)⑨の質問で、自費診療のことを聞かれていますが、保険者が関与する問題ではありません。自費診療が何の治療に対していくら支払ったかを確認する理由と根拠をお示しください。また、回答書面の最下部に※として健康保険法第59条の要旨を掲げて記載されていますが、“保険者は保険給付に関して必要があると認めたときは”で明らかなとおり、あくまで保険給付をするために必要な事柄についてのみということであって、保険給付を行うため以外にも広く調査権限を認めた条文ではありません。自費診療は保険外の診療であることから、当該質問は行き過ぎた質問であって問題があると考えます。この点について明確に回答してください。
(7)⑪の質問ですが、これでは柔道整復師の治療を受けるには、その前提として医師の診察を受けなければならないような誤解を与えます。これも柔道整復施術から患者さんを遠ざけようと意図的に患者抑制の受診妨害につながる質問です。柔道整復師の施術を受けるにあたっての条件として脱臼・骨折に係る施術は医師の同意を要することは承知していますが、これ以外の条件はまったくありません。柔道整復施術に併せて医師の診察を受けさせることについて患者さんを指導することは、柔道整復師に課せられた義務でも何でもありません。ましてや、健康保険組合という保険者の権利でも義務でもありません。なぜこの質問が必要なのかの理由を明らかにしてください。
(8)⑫~⑯の質問ですが、これらの質問はすべからく柔道整復師の行う治療の通院状況を確認するための質問として、まったくもって不必要な意味のない質問であると考えます。柔道整復師の施術と医師の診療とを結びつけたうえでそれが施術を受けるための条件になっていると患者さんに思わせることを狙ったものと推察いたします。このような意図的に柔道整復師の施術を抑制することを目的とするのではなく、あくまで患者さんの治療行為を受ける自由な選択権を保障するのが保険者の役目であり、ましてや当該通院状況回答書に回答させることにより、患者さんの医療を受ける選択権を侵害してはなりません。このことについて貴組合の考え方を明らかにしてください。
(9)⑯の質問ですが、医師の同意(後療依頼)を得ているかどうかについて、(不全骨折・脱臼に限る)とし、骨折を除外している理由を明示してください。
(10)柔整療養費の適正化への取組の一環として、平成24年3月12日付の厚生労働省保険局4課長連名通知が発出されました。これは保険者が行うべき取組や留意事項を具体的に示すことを目的とした通知です。この通知の2.多部位、長期又は頻度が高い施術を受けた被保険者等への調査として、被保険者等に対し文書照会等を実施する場合の具体的様式例として「柔道整復の施術を受けられた方へ」と題された様式を用いれば十分であるものと考えます。当方といたしましては、国が通知で示した様式例1又はこれに準じた回答書により行われることを求めます。このことについて、貴組合の見解を求めます。
                             
by ueda-takayuki | 2012-05-02 15:07

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