先ずは書面で確認してみることにしました

全柔法発第0319001号
平成20年3月19日

大阪府社会保険診療報酬支払基金理事長 殿
全国柔整鍼灸協同組合
法制局長 上 田 孝 之


療養費同意書交付料の減額事由について( 照 会 )

大阪府社会保険診療報酬支払基金(以下、「貴支払基金」という。)の審査において、保険医療機関から社会保険診療報酬請求明細書により、鍼灸施術にかかる医師の施術同意の交付料として、療養費同意書交付料100点を請求したところ、
○初診時に療養費同意書交付料を交付された理由をお知らせください。療養担当規則第17条にご留意ください。
ということで返戻されたり、また、
○1.C 療養担当規則等に照らし、医学的理由により適当と認められないもの。
○1.D 告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの
ということで審査会審査結果による減額となっている実態に関しまして、医師から鍼灸マッサージ施術の受療患者に対し、「同意書を発行しない」旨の事例が急激に増加し、患者及び鍼灸マッサージ師から当職あてに多数の相談が寄せられているところです。
保険医療機関からの社会保険診療報酬請求明細書による請求において、医師が行った鍼灸施術に係る医師の同意書の作成の結果としての報酬として、療養費同意書交付料を診療報酬明細書で請求した100点が減額処分されたものであり、その理由が「療養担当規則等に照らし、医学的理由により適当と認められないもの」「告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの」ということであります。
これは保険医療機関及び保険医療養担当規則第17条の関係法規及び厚生労働省保険局発出の諸通知記載内容を全く理解していないばかりか、鍼灸施術にかかる療養費の支給を妨害する不当な処分であります。
大阪府社会保険診療報酬支払基金が同意書交付料を認めない理由としているのは、保険医療機関及び保険医療養担当規則第17条に記載のある「保険医は患者の疾病又は負傷が自己の専門外にわたるものであるという理由によって、みだりに、施術業者の施術を受けさせることに同意を与えてはならない。」のことと思料するも、そもそもこの規則は保険医の診療方針を述べたものであります。“自己の専門外”を理由にみだりに同意してはならないということであります。
しかしながら、貴支払基金は、『鍼灸治療を知らないことを理由に同意をしてはならない⇒鍼灸治療を理解していなければ、更に付け加えれば、鍼灸に詳しくなければ同意をしてはならない』と誤って解釈しているのではないかと推察いたします。この療担規則17条を根拠に「鍼灸同意は自粛するよう国が求めている」なんて、まったく見当外れなことを言っている地方医師会も事実存在しているのです。 
本当はむしろその逆で、国は再三にわたって鍼灸療養費にかかる医師の同意書の交付が円滑になされることを目的に通知を発出してきたところであります。ここで主だったものを紹介してみますと次のとおりです。

参考 医師の同意書にかかる過去の措置状況について(概略)
1 昭和42年9月18日保発第32号
(1)  医師の同意書について、病名、症状(主訴を含む。)及び発病年月日の明記された診断書であって療養費払の施術の対象の適否の判断が出来るものに限り、これを当該同意書に代えて差し支えないものとした。
(2)  同意書又は診断書は、療養費支給申請のつどこれに添付することを原則とするものであるが、同意書又は診断書に加療期間の記載のあるときは、その期間内(初療の日から3ヶ月を限度)の場合は、第2回目以降その添付を省略して差し支えないものとした。
 2 昭和46年4月1日保険発第28号
 医師の同意書又は診断書について、記名押印にかえて当該医師の署名でも差し支えないものとした。
 3 昭和47年2月28日保険発第22号
 初療の日から3カ月を限度とする支給要件について、3カ月を経過したものであっても、新たに当該施術を必要とする旨の医師の同意書が添付されているものに限り、更に3カ月を限度として支給して差し支えないものとした。
 4 昭和61年4月21日保険発第37号
(1)  円滑な同意書の交付を図るため、医師の同意書を様式化した。
(2)  初療の日から3月を経過した時点において、更に施術を受ける場合に必要な医師の同意書については、実際に医師から同意を得ておれば、必ずしも医師の同意書の添付は要しないものとした。
5 平成元年9月4日保険発第85号
 診断書について、療養費払の施術の対象の適否に関する直接的な記述がなくても、病名、症状(主訴を含む。)及び発病年月日その他の記載内容から、当該適否の判断ができる診断書であれば足りるものであるとした。
6 平成4年5月22日保険発第75号
 円滑な診断書の交付を図るため、はり、きゅうの施術に係る医師の診断書を様式化した。
7 平成5年10月29日医事第93号・保険発第116号
診断書の交付を患者から医師が求められた場合には、適切な対処がなされるよう関係者への周知徹底及び指導を図った。
8 平成8年5月24日付保険発第84号
 支給対象となる疾病の類症疾患として頸椎捻挫後遺症を加えるとともに、診断書の交付を患者から医師が求められた場合は、円滑に交付されるよう指導する旨の通知を発出した。
9 平成9年12月1日付保険発第150号
 通知に示された対象疾患について保険医より同意書の交付を受けて施術を受けた場合は、本要件を満たしているものとして療養費の支給対象として差し支えない。また、同意書に代えて診断書が提出された場合には、記載内容等から本要件の適否を判断されたいとし、先行医療の義務付けを解除し、かつ、同意書に代えて診断書でも認められるとした。

今は医師の同意書に代えて診断書でも保険請求が認められます。もし診断書の交付を拒否するのであれば、医師の業務違反になるおそれが高く、従って医師は診断書(同意書)を発行しなければなりません。
鍼灸のことではありませんが、同じく医業の一部である施術業者の施術という意味では、柔道整復術につき、昭和31年7月11日医発627号により「地方医師会等の申し合わせ等により、医師が柔道整復師から、脱臼又は骨折の患部に施術をするにつき同意を求められた場合、故なくこれを拒否することのないように指導すること。」という通知も発出されています。
医師は施術に関する同意にあたり、あくまで医師のテリトリーである西洋医学の見地から「医師による適当な治療手段がないと判断される必要はあるが、医師が当該被保険者に対するはり施術等の適否まで判断する必要はない」(平成15年9月2日付小泉内閣総理大臣の内閣答弁書にあるとおり、医師は東洋医学を知らないことをもってむやみに同意をしてはならない、と解釈してはいけないのです。そしてこの古い規則を都合の良い様に捻じ曲げて解釈して、保険医が行った同意書交付料の支払拒否の理由に使ってはならないのです。
次に、それでは医師の初診日に同日付で同意があった場合(初診日即同意)は、医師の具体的な治療がなされていないことを理由に認められないかというと、過去においては先行医療を義務付けられた時期があったのは事実ではありますが、現在は“初診日即同意”も有効であり認められる運用になっています。
先行医療の義務付けとは、療養費を請求するにあたって、先ず「はじめに保険医療機関における医師の治療を受けなければならない」とする考え方です。この考えは保発32号の「はりきゅう施術の療養費支給対象は医師による適当な治療手段のないもの」を受け、この治療手段のないものという表現をより具体的に表した解説通知である保険発28号に当該根拠を見ることができます。

―昭和42年9月18日保発32号 保険局長通知(抜粋)―
   はり及びきゅうに係る施術の療養費の支給対象となる疾病は、慢性病であって、医師による適当な治療手段のないものであり、主として神経痛、リウマチなどであって類症疾患については、これら疾病と同一範ちゅうと認められるものに限り支給の対象とすること。

局長通知でいう「医師による適当な治療手段のないもの」とは、どのようなものなのか不明であるから、より分かりやすい運用通知の発出を保険者等から求められた結果、厚生省(当時)はこの部分の判断に供する運用通知を発出しました。これをもって先行医療(はじめに療養の給付ありき。医師の治療先行がなければ支給しない取扱い)が始まったのです。

―昭和46年4月1日保険発28号 保険局医療課長通知(抜粋)―<平成16年10月1日廃止>
3 通知でいう「医師による適当な治療手段のないもの」とは、保険医療機関における療養の給付を受けても所期の効果の得られなかったもの又はいままで受けた治療の経過からみて治療効果があらわれていないと判断された場合等をいうものであること。

この医療課長による解釈通知により、医師による適当な治療手段のないものというのが、保険医療機関での医科の治療効果の結果が否定されたものであるとされたので、「はじめに医者の治療が先になければならない」ということになり、昭和46年のこの課長通知発出後は更なる保険適用に制限が加えられてしまいました。これを打ち破るのに鍼灸業団側は時間を要したところでありますが、26年後に勇気ある患者や支援団体の努力もあり、裁判闘争の和解などを受けた形で、この先行医療の義務化通知28号を平成9年12月に一部改正し、医療先行の該当部分を打ち消す医療課長通知の発出を見たところです。
―平成9年12月1日保険発150号 保険局医療課長通知(抜粋)-<平成16年10月1日廃止>
~いままで受けた治療の経過からみて治療効果があらわれていないと判断された場合等をいうものであること。
 なお、通知に示された対象疾患について保険医より同意書の交付を受けて施術を受けた場合は、本要件を満たしているものとして療養費の支給対象として差し支えないこと。また、同意書に代えて診断書が提出された場合には、記載内容等から本要件の適否を判断されたいこと。

通知文中の「本要件を満たしているものとして差し支えない」とは、通知に示された対象疾患、即ち6疾患(神経痛、リウマチ、頸腕症候群、五十肩、腰痛症、頸椎捻挫後遺症)等について保険医の同意書を受けたなら、先行医療の経過及び結果を議論することなく、要件すべてをクリアーしていると考えて支給してよいという通知であります。その次の“また書き”で、診断書提出においては要件の適否を保険者に判断させてはいますが、同意書であれば交付されたことをもって支給要件を議論する必要がないのです。保険医による同意書交付=(イコール)療養費支給要件を満たしているものとして差し支えないのです。 
この時点で昭和46年から続いていた従来の先行医療の義務化は解除されました。それを裏付けるがごとく、過去通知の統合版ともいえる平成16年10月1日保医発1001002号の留意事項通知の第2章2は保険発第150号の記述を残し、一方、保険発第28号通知は廃止し現行留意事項には残らなかったところです。
過去からの鍼灸にかかる取扱い通知のうち、鍼灸療養費の取扱いにかかる医師の同意書の取扱いについて適宜、調整・廃止した結果として、平成16年10月1日付の課長通知にて統合整理されたうえ発出されました。これが現行運用です。この通知発出時に、医療先行を求めた保険発28号通知(所期の効果の得られなかったものが支給対象だとする保険局医療課長通知)が同日付で廃止されているのです。
併せて、通知に示された対象疾患について保険医より同意書の交付を受けて施術を受けた場合は、療養費の支給要件を満たしているものとして療養費の支給対象として差し支えないとした保険発28号通知の廃止と同時期(平成16年10月1日付)に“なお書き”で改正された保険発150号通知も廃止されましたが、この6疾患等について保険医の同意書さえあれば要件があるものとして差し支えないとするなお書きは、具体的に6疾患名を列挙したうえで、現行運用通知である保医発1001002号 に引き継がれ明記されたところです。
平成16年10月1日保医発1001002号 保険局医療課長通知(抜粋)
―現 行 運 用 通 知―
 はり、きゅうの施術に係る療養費の取扱いに関する留意事項等
第2章療養費の支給対象
 1 「はり・きゅう及びマッサージの施術に係る療養費の取扱いについて」(昭和42年9月18日保発第32号)により、療養費の支給対象となる疾病は、慢性病であって医師による適当な治療手段のないものとされており、主として神経痛・リウマチなどであって類症疾患については、これら疾病と同一範ちゅうと認められる疾病(頸腕症候群、五十肩、腰痛症、頸椎捻挫後遺症等の慢性的な疼痛を主症とする疾患)に限り支給の対象とされていること。
 2 神経痛、リウマチ、頸腕症候群、五十肩、腰痛症、頸椎捻挫後遺症について、保険医より同意書の交付を受けて施術を受けた場合は、医師による適当な治療手段のないものとし療養費の支給対象として差し支えないこと。
3 神経痛、リウマチ、頸腕症候群、五十肩、腰痛症、頸椎捻挫後遺症以外の疾病による同意書又は慢性的な疼痛を主症とする6疾病以外の類症疾患について診断書が提出された場合は、記載内容等から医師による適当な治療手段のないものであるか支給要件を個別に判断し、支給の適否を決定する必要があること。

これらのことから、療養費同意書交付料にかかる減額を取消し、速やかに療養費同意書交付料の算定が認められなければなりません。
併せて、次の6点につき照会いたしますので、ご回答をいただけます様重ねてお願い申し上げます。(返信用封筒を同封いたしました。)

一、貴支払基金が医師の行った療養費同意書交付料を減額し、その算定を認めないということは、同意に基づく鍼灸施術自体を認めないと考えてよろしいか。
二、療養費同意書交付料の減額をしたことを、保険者あてに通知しているのか。
三、二の通知を行わない場合、療養費は支給済みとなっていることと思われるが、保険者はどのような対応をされることとなるのか。
四、同意書交付料が認められないならば、鍼灸施術にかかる療養費は、医師の同意書がないものと看做され、同意書無しで支給されたことになるのか。
五、貴支払基金での同意書交付料が減額されたことを理由に、療養費が万が一にも不支給となるおそれも考えられることから、患者・被保険者には多大なる影響が発生すると思われるが、このことについてのお考え如何。
六、そもそも、療養費同意書交付料が減額された鍼灸施術にかかる療養費は不支給となると考えてよろしいか。
七、六で鍼灸療養費が不支給となると判断された場合、鍼灸施術料金全額支払いのための患者・被保険者あての連絡は貴支払基金が行うのか、同意医師が行うのか。

以上、ご照会いたしますので、対応方よろしくお願いいたします。

問 合 せ 照 会 先
全国柔整鍼灸協同組合
法制局長 上 田 孝 之
電話番号 06-6315-1010
by ueda-takayuki | 2008-03-19 16:44

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