柔整養成学校の経営者や教職員にことの重大さを知ってもらいたい実務経験来年から1年必要だよ

柔道整復施術療養費に係る施術管理者に対し「実務経験の義務付け」がもたらす養成施設への影響等について上田は心配なのです。健康保険法等の医療保険の給付として、柔道整復施術療養費の取扱いにあたり、給付の適正化の観点から、療養費のあり方を議論する専門部会として厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会医療保険部会に柔道整復療養費検討専門委員会とあん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会がそれぞれ置かれております。

公益社団法人日本柔道整復師会(以下、「社団日整」という。)が15年以上も前から熱望していた受領委任の取扱いにおける施術管理者(保険取扱いができる者)になるために3年の実務経験を要する方策につきましては、検討専門委員会の議論を経て、その実施が固まり、検討の具体案(以下、「事務連絡」という。)が平成29615日付の厚生労働省保険局医療課保険医療企画調査室長名で発出されました。標題には「施術管理者の要件について(周知のご依頼)」とあり、(案)とされているものの、この周知を図るためというのはほぼこのまま実施される予定であることが窺われます。

しかしながら、実際の整骨院・接骨院の治療院の第一線の現場におきましては、この実務経験1年~3年を受け入れるだけの経営的余裕などないのです。国から何らの補助金・支援金・負担金等が拠出されないのであれば、卒後3年間の実務経験を経験できる免許取得者などおりません。養成施設の学校を卒業して柔道整復師免許を取得しても保険請求できない国家資格であれば絶滅の危機に瀕することになると思われます。これは「柔道整復師養成施設の廃校」に直結するのみならず、ひいては「柔道整復業界の消滅」の第一歩であると危惧しているところです。

このような観点から、当方は3年間の実務経験の導入に強く反論するとともに、当面の経過措置として導入が考えられている1年~3年の段階的運用に対しましても疑義があり、併せて「適切な保険請求=不正対策」に鑑み実施される研修の受講につきましても、厚生労働省保険局医療課(以下、「当局」という。)に対し、2回にわたり疑義照会するも、未だに何らの回答もありません。
よって、学校の経営者や教職員、養成施設の関係者やもちろん学生さんに対しての啓蒙活動と喧伝の意味合いをもって、以下の呼びかけを行って参りたいと思う。
上田からのご指摘です。学校の皆さん関係者の皆さん聞いてください。読んでくださいね。

この実務経験が導入されますと、業界はもとより、各養成施設が大打撃を受けること必至であることから、皆様方の養成施設が近々にも直面すると思われる「最重要点事項5点」を申し述べさせていただき、貴校における積極的な取組みを期待する意味合いから、勝手ながら当紙面を発出させていただきました。

貴校における本件実務経験導入の件についての、貴校在学生を対象とした「反対署名活動」等の具体的な取組みが求められていることを取り急ぎお伝えするものです。

学校関係者の皆さま、どうぞよろしくお願いいたします。

1.新たな実務経験導入は学校経営者が在校生から訴えらえるのではないか

公益社団日整が求める柔整業界縮小策である施術管理者(保険取扱いができる者)になるために1年~3年の実務経験を要するための検討の具体案が平成29年6月15日付の厚生労働省保険局医療課保険医療企画調査室長から発出されたことに、各養成施設は危機感を持たねばなりません(別添参照)。実務経験を受け入れるだけの余裕など臨床現場における整骨院には十分な受け皿になり得ないからです。

国から何らの補助金・支援金・負担金等が拠出されないということは、卒後1~3年間の研修を受けられる者など現実問題といたしましては困難です。養成施設の専門学校や大学を卒業してめでたく免許を取得しても、その1年~3年は保険請求できない国家資格など何らの魅力もないものと入学希望者は認識するのではないでしょうか。

当方は1年以上も前から何度も国に対し提言し1年~3年の実務経験には反対する論調を繰り返して参りましたが、事務連絡が発出されてしまいました。これは柔整学校の廃校・絶滅に直結するのみならず、ひいては「柔整業界の消滅」の第一歩であると危惧しているところです。これは決して誇張した意見ではなく、現実問題なのです。

学校関係者は特段の抵抗を示されていないようにお見受けいたします。養成施設としての大学や専門学校が今後廃校に追い込まれていく重大事案を看過していてよいのでしょうか。

そうすると、養成施設としての学校を卒業して免許を取得しても施術管理者になれない(実務経験できる場がない)、結果として保険請求できないような国家資格に何らの意味はないとの認識に基づき、柔整師養成学校は入学希望者など激減してしまいます。

また、この問題は新規入学者定員の確保が困難な状況に置かれることに止まらず、すでに今春から入学したばかりの1年生も卒後1年の実務研修を義務付けられ、その1年さえもクリアーできないことから「(1年の実務経験を要することなど)入学時には知らされていない。何らの告知も受けていないことから養成学校を相手取り、訴訟を提訴する学生が出てくる可能性も強いです。この学生の言い分は至極当然のことと思われます。

柔道整復師という職業の破滅を招く愚策を提示した社会保障審議会医療保険部会の柔道整復療養費検討専門委員会の議論は受け入れがたいものです。この取扱いを強硬に求めた日整の罪は余りにも重大であります。

しかしながら、だからと言って柔道整復業界が消滅するのをこのまま黙って見過ごすことはできません。養成施設の事業者と私ども業界関係者が力を合わせて叡智を結集し、徹底抗戦を仕掛けていくことが、今求められています。少なくとも養成学校の経営者・教職員そして在学生の皆さんが声を大にして立ち上がれるように問題提起していかなければなりません。

不正問題で柔整業界を敵対視している保険者や行政に対しまして、柔整業界としては、整骨院の療養費収入がきわめて厳しい状況下に置かれていることを何度も説明して参りました。現実問題として、今どんどん「廃業」が盛んになっているという悲しい現実があります。これを受け、施術者団体も会員の取り合い・奪い合い合戦が始まっています。これに併せて、各保険者からの支払保留や返戻も顕著であり、開業柔道整復師の施術所に於いては、療養費取扱高で年収500万円未満が4割近いのです。これを1,000万円未満に拡大してみましても、何と全体の7割以上に上ります。こんな状況で免許取得したばかりの新人に実務経験をさせることのできる施術所など無いのです。

ここで、おぼろげながら見えてきたのは、この柔整業界の「消滅の危機」であります。それを望んでいる者が柔整業界内外において存在するということです。当方といたしましては諦めずに反論して参りますが、本件は養成施設に与える影響がきわめて大きいことから、何度も繰り返して申し述べますが、1年~3年間の実務経験は愚かな選択であるとの共通認識のもと、何らかの反論なり抵抗を国側に示すことが肝要です。3年の原則論を短縮して、経過措置として1年~2年を導入しようが、この検討テーマを導入したなら必ず柔整業界は絶滅する命運にあると認識すべきです。

重要だからあえてもう一度主張いたします。これを受け入れたならば柔道整復業界は必ず絶滅する運びとなります。少なくとも健康保険(療養費の受領委任の取扱い)からは撤退となることでしょう。

これらのことから、現在養成施設で授業を受けている学生の3年生ももちろん1年生も入学時には知り得ない実務経験がなければ保険が取り扱われないことを不服として学校経営者を訴える民事訴訟の提訴が想定されます。各養成施設は在校生からの訴訟提起に対する対応策を講じなければならないのは当然、訴訟を提訴されないための防衛策なり回避策を講じておく必要性があります。

2.養成施設における在校生等の「署名活動」による意思表示が求められること

厚生労働省の担当部局である保険局医療課に確認したところ、「来年4月以降は1年の実務経験がなければ受領委任を取扱えないとしているが、その詳細はまだ決まっていない」ということは、これから学校関係者が巻き返して「事実上の骨抜き」を画策しなければならないのです。まだまだ遅くはありません。これだけ大学・専門学校の柔道整復養成学校を“死に追いやる愚策”について、当の学校関係者はどれだけ反論し抵抗しているのかが柔道整復業界としてはよく分からない状況です。

今のところ、健康保険を取扱うために必要な施術管理者になるための実務経験はまったく不要です。何らの実務経験もなく施術管理者となり保険請求ができます。

たしかに現在、実務経験は不要ですが、来年から1年間の実務経験がなければ施術管理者(保険を取扱える者)になれない抑制策が導入されることになります。つまり、3年間勉強して柔整の国家試験に合格しても、卒業とともに「保険取扱い」はできないという状況に置かれてしまうのです。厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会医療保険部会柔道整復療養費検討専門委員会での経過的措置としての原案は、

平成29年度の学生は実務経験1年、平成29年度よりも前に養成施設を卒業した既卒者も実務経験1年、平成29年度に4年生の学校に入学した者が卒業し、1年の実務経験が可能となる平成33年度までは既卒者を含め実務経験1年、その後の平成34年度と平成35年度は実務経験2

と提示案が出されています。

この検討案は当方に言わせれば無理難題なことであって、実現できるのかどうかはなはだ疑問であるのは当然ですが、そもそもこんな馬鹿げた検討案を認めるわけにはいかないので徹底的に反論を展開すべきです。

先ずは、貴校において在学生を中心に保険取扱いにあたっての実務経験を要する取扱いについて説明会を行い、これに反対する意思表示を具体的に指し示すべきです。

具体的には、学生による「実務経験導入に係る反対署名活動」を展開されることをご提案いたします。

3.このままでは教職員の「失業」の危機が迫りくること必至であること

 現状におきましては、どのような施術所や施設で働いた実績の期間が実務経験となるのかまったく明快になっていません。単に「はじめに3年の実務経験ありき」ということで愚かなものです。保険医療機関で柔整師が勤務したらなぜそれが「柔整の実務経験」となるのかという、整形外科医からの素朴な疑問にすら国は答えられていません。接骨院で勤務する柔整師として柔整業務を行ったのであればその期間が実務経験となるでしょうが、接骨院以外の施術所、保険医療機関、診療所等ではどうなのかは、その業務内容によって左右されるものなのか、又は一律に認められるのかの詳細なルール作りが求められるのは当然です。

運動器リハビリテーションの算定要件と関連性があるのかどうかさえ、現状では何も決まっていないのです。そのうえ、この実務経験3年というのは、研修を受けることと「セット」で導入されます。

この研修もまた、今のところまったく明らかになっていないのです。この2つを仕切らねばならない大問題であることから、厚生労働省は早々には次の検討専門委員会を開催することも事実上困難な状況下におかれ、早くともその開催は本年10月以降との情報があります。 

検討そのものがしばらく「放置」されている現況にあります。年間4,500人程度の卒業生が毎年有資格者として柔道整復業界に入ってきますが、卒業生たちを原則3年間も給料を払いながら研修させることができる接骨院が日本中に何軒あるのでしょうか。臨床現場としての施術所には実務経験を経験させるだけの余裕などないことを私たちは知っているではありませんか。

1年~3年の実務経験を得るための施術所の確保は現実的ではないのです。免許を取得した者に対し、例えば月額20万円程度の給与(年収で250万円程度)を支給したうえで経験を積んでいただける環境を提供できる整骨院はないのです。

社団日整のデータによれば療養費取扱高は年収500万円未満が4割近いのです。もう少し広げて1,000万円未満として見ると、何と全体の7割以上になります。施術所における体制を考慮すれば、労働基準法や最低賃金法にも抵触しかねない重大な問題をも孕んでいるのです。こんな脆弱な経営環境下の状況で、柔道整復師免許を取得したばかりの新人に実務経験させる余裕など開業者にはないのが現実であることは自明の理です。すなわち、実務経験を得られる整骨院はきわめて少ないという現実が明白になっているのです。

当然ながら、入学して3年間の勉強を積み、資格を与える国家試験としては高度に難易度が高く、近年合格率が低下している国家試験に合格しても、その後1年~3年実務研修を行わなければ保険請求ができない国家資格など、何らの興味も示されないことになります。結果として、養成施設への入学希望者は激減することから、養成施設は激しく淘汰され、教職員の失業の危機が到来するのは目に見えているのです。

皆さんが立ち上らなくてどうするのでしょうか。

4.学生の卒業後の実務経験及び実務研修は学校関係者が主体となって議論されるべき

これまで、縷々、社会保障審議会医療保険部会に置かれている柔道整復療養費検討専門委員会で議論され審議されてことを受け、来年4月から実施される予定の「保険請求にあたっての実務経験と実務研修」の問題について申し述べてまいりました。こうなることをまったく知らずに入学してきている本年入学者までの学生に大幅な不利益になることから、当方といたしましては厚生労働省保険局に出向き軽減策を要望して参りましたが、保険局の姿勢は変わらず、「在学生にも卒後1年の実務経験と研修を科す」というのです。

これらの実務経験の強制が齎すマイナス要因を何度も当局には説明し、疑義照会書面をも送付したところです。しかしながら、この愚策を熱望したのは保険者や学識経験者ではなく、あくまで公益社団法人日本柔道整復師会という業界団体であることが問題であります。

どうして、学校関係者は反論しないのでしょうか。厚生労働省や日整に対しなぜ反論しないのでしょうか。

そもそも本件を議論してきた療養費検討専門委員会の委員に学校関係者が一人も就任せず、まったくもって「蚊帳の外」におかれ、過去に於いて何らも関与していません。

養成施設の存続に関する最重要課題であるにもかかわらず、学校関係者が一人も大臣からの委嘱を受けていないことは、学校関係者がないがしろにされている証左でありましょう。

養成施設の経営者並びに教職員はこれらの動向を確実に見極め、早急に適宜適切な行動を執られることが、今まさに求められているのです。

5.学校関係者と学生の皆さんは闘うべきである

保険取扱いとして、柔道整復施術療養費を提出できるのは施術管理者ですが、この施術管理者になるには、今後原則3年の実務経験を要するというとんでもない愚策を日整が唱え、社保審医療保険部会に置かれる検討専門委員会でもこの承認を受け、後は実務的に通知の発出を行うにあたり、「ガス抜き」の位置づけで、あくまで(案)としてではありますが、今般厚労省保険局医療課保険医療企画調査室長から発出された「施術管理者の要件について(周知のご依頼)」を見て、柔整業界の者達は特に議論せず、慌てもせず問題視もせず、あくまで傍観しているようなのです。
 本策は単に養成学校の絶滅策に止まらず、ひいては柔整業界の絶滅、少なくとも受領委任払いの廃止に直結する第一歩であることに間違いありません。
 この通知の案では、現在の1年生も来年卒業する3年生も免許を取得しても「実務経験1年」を経なければ保険請求できないことは既に述べました。当然、現在の養成学校で学ぶ学生はそんなことは聞いていないので、1年生なら「そんなことが分かっていたなら入学しなかった」、3年生からは「来年免許を取得したら開業しようと思っていたのに!どうしてくれる。納得できない」と、当然のことながら専門学校の経営者に詰め寄ることになりましょう。訴えることにもなるでしょう。

だからこそ、これは「養成学校問題」なのです。公益社団法人全国柔道整復学校協会は今まで何も対策を採っていなかったようにお見受けいたしますが、ようやくことの重大さに気付き、学校協会として本件に関する問題意識を持った会議が行われたようです。しかしながら、ここでも日整や厚労省を攻撃することはなかったということです。

来年度以降、専門学校に入学してくる新入生は激減するので、専門学校の廃校の続出という筋書きがいよいよ実施されることとなりますが、当方が柔整業界を広く見渡してみましても、柔整業界団体の会長クラスも養成施設の学校経営者同様に問題意識がなさすぎるのです。

これは、単に新規卒業者が即、施術管理者になれないことから、新規免許者の保険請求が出来なくなるということだけに止まらず、今後の検討如何によっては、すでに免許を保有しているが現在は施術管理者になっていない者もすべて、受領委任の取扱いを届出するタイミングで1年~3年の実務経験が必要となるということなのです。

これが実施されるならば、新規の施術管理者の排出はきわめて困難となることから、既存の施術管理者の「奪い合い」になり、来年度以降施術者団体は、他の団体に加入している者を自分の団体に「金を積んででも引っ張ってくる」ということになるのは当たり前になります。

各養成施設の経営者や教職員の皆さま、その他学校関係者や学生にも事の重大さをご理解いただき、学校ごとに何らかの取組み、例えば既出2で述べました学生等による署名活動の実施や、養成施設からの質疑照会等の積極的な取組みをお願いし、また期待しております。

                                    
by ueda-takayuki | 2017-07-13 15:09

上田たかゆきオフィシャルブログ


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