あはき一部改正通知の不明点について疑義照会し当局の考えを質すこととした


 平成29年6月26日付保医発0626第3号の厚生労働省保険局医療課長名で発出された療養費の取扱いに関する一部改正通知において、療養費支給申請を行う被保険者並びに被保険者の属する世帯の世帯主の申請を支援する施術者及び施術者団体として、理解が困難な点等の疑義が生じていることから、今後の当該改正通知の運用に関して下記のとおり疑義照会しておいた。

 なお、全柔協としては、保険局の仕切りで全国の会場をテレビ中継でつないで、この一部改正通知に関しての専門の保険講習会を722日(土)1700から1830まで開催する。私も出席して意見を述べたいと思う。

 私が厚生労働省保険局医療課長宛てに発出した疑義照会の書面内容を参考までに掲載しておく。同日付で発出された疑義解釈資料には、不支給とする扱いはしないとか、これをもって療養費の支給の可否を判断する取扱いは適当ではないなどと回答があるのだが、それでは、何のために添付様式を強要するのか。何を言っているのかさっぱり分からない通知だ。これは受領委任の取扱いを行うための環境整備の位置付けであろう。低劣な通知内容に対し辟易するというよりは、むしろ滑稽である。

1 療養費支給申請において新たに添付様式(別紙5)を添付させることについて

社会保障審議会医療保険部会に置かれた療養費検討専門委員会での事務局側からの資料にあった案通りの様式を本年7日以降の施術分からは療養費の支給申請にあたり、はり・きゅうでは「痛みの強さのNRS指標として10段階分析」、マッサージでは基本動作に係る患者の状態の評価を個別に求めるということですが、これが添付されないと不備返戻となるということであれば、結果として、「月15回までの回数制限の取扱い」となるもので、事実上の「回数制限の導入」となってしまいます。

 平成14年5月以前の療養費の取扱いにあたりましては、初月15回までとし、その後月内10回を限度として、かつ6月以内とする療養費支給申請事務における「6か月65回の期間・回数制限」が、はり師・きゅう師の施術実態に鑑み、また、有識者や学術者並びに国会議員による議論の終結をもって、平成14年6月1日以降の施術分から完全撤廃された経緯があります。

別紙5様式の毎月添付がなぜ必要なのでしょうか。あはきの治療に関しては、そもそも慢性的な経過を辿る疾患が主たるものであり、治療が数年にわたるように長期間を必要として、回復傾向も非常にゆっくりしたものです。毎月の添付は回復に変化が見られない支給申請を一掃して「認めない」とする保険者の不支給処分に直結する危険性を孕んでいます。

今般新たにNRS分析(痛みの強さの評価)と基本動作の患者状態評価を求める書面を添付させることがはり師、きゅう師、あん摩・マッサージ・指圧師にとって膨大な事務作業の負担となるのです。これでは療養費の支給申請の抑制に直結すること必至です。

このような多くの作業量の負荷をあはき師に負わせて添付書類を増やすのならば、その代償としてその分の施術料金の増額を図るべきと考えます。

新様式添付を義務付けた基本的姿勢をご教示ください。

2 添付様式(別紙5)を添付させることはあはき師に「診断権」を認めたということか

 新たな添付様式に患者からの聞き取りをした結果を施術者が証明することをもって、あはき業界の一部には、「あはき業界に対し、ついに当局(厚生労働省保険局)が“診断権”を付与したのである」と好意的な評価を喧伝する向きもあります。これは、患者の痛みの状況や基本動作についてあくまで“施術者が記入して内容を証明する”のだから、あはき師が患者に対する「診断権」を有しなければこのような書面の作成はできず、またその義務もなく、そうすると、今般の一部改正通知で「あはき師にも診断権が付与されたことになると認識してよろしい」ということでよろしいか。

3 償還払いでも代理受領でも施術者との協定・契約の締結が存在しない現況では意味不明

当該一部改正通知は「適正化の名目による療養費対策」ということなのでしょうか。すなわち、本年10月以降の、あはき療養費に係る「受領委任の取扱いの導入」の具体的な制度設計に向けた「地ならし」との位置付けでしょうか。

あはき師が施術を行う療養費支給申請は、現在のところ、あくまで償還払いか又は代理受領であって、いずれにしても受領委任の取扱いに基づく協定・契約が締結されていません。 

柔道整復療養費で行われている施術管理者のような定義が全く存在しないにもかかわらず、当該改正通知では必ずしも施術を実際に行った者ではない施術者からの申請も公に認める内容となっています。

実際に施術を行った施術者

中心的に施術を行った施術者

施術所の代表者(有資格者に限る)

これに準ずる立場にある有資格者

患者の状態の評価を行った施術者

と施術者関係用語がきわめて曖昧に使用されており、これらの定義も不明確です。

施術証明欄署名や先の新様式作成にあたり、誰が記載するのか、施術証明欄を記載すべき者の明確な定義を求めます。

併せて、患者に対して「中心的に施術を行った施術者」は、単に申請月内において施術回数が1回でも多い者ということでよろしいのかを明確にしてください。

4 当該通知が施術者団体に与える影響について

既出3でも申し述べましたが、特に問題なのは、あはき療養費支給申請書の施術証明欄の証明者欄の取扱いです。同一施術所で複数の施術者がいる場合には、この一部改正通知では有資格者の中から誰かが代表して施術証明することが公認されることになってしまいます。 

また、1人の名前に限定して療養費支給申請が認められ、実際に施術を行った者でなくても療養費の施術者証明が許されるということはどういうことでしょうか。

同日付で運用に関する疑義照会資料も同日付で事務連絡されていますが、「答」の意味が不明な点があります。特に問1、問5及び問24の回答が意味不明です。柔道整復施術療養費の取扱いのように施術管理者の定めはないのです。行政側が施術者側と何らも協定又は契約上締結している訳でもないレベルにあるあはき療養費について、療養費の申請者であり権利主体として権利が帰属する被保険者等を無視していることになります。

柔道整復療養費の「施術管理者」と同様の取扱いが新たに設けられたとの感があり、これはまさに平成30年度以降に導入が予定されているあはき療養費における「受領委任の取扱い」を念頭に入れた改正と思われますが、各点における当局側の考えを明らかにしてください。

5 結局のところ添付様式(別紙5)で不支給処分の資料にもならないのではないか

 改正通知の運用上の取扱いとして、添付様式がない申請にあたっては「不備として返戻を行い、速やかに療養費支給申請書への添付を求めるようにされたい」としており、また、「申請日時点で患者の状態の評価が行われていない場合でも、このことを理由として不支給とする取扱いとはせず、返戻後、速やかに施術者に患者の状態の評価を受け、再申請を求めるようにされたい」とされています。

しかしながら一方では、照会資料の回答には「記載された月16回以上の施術が必要な理由の内容のみをもって、療養費の支給の可否を判断する取扱いは適当ではなく、改めて施術者や患者への照会等を行ったうえで支給の可否を判断されたい」というのであれば、現段階においては、患者の状態の評価の内容により支給の可否の判断を行うものではないことに留意を促していることから、新様式の添付はそもそも申請の支給決定に何らの意味もなさない不要なものではないかと思料されますが、如何でしょうか。

つまるところ、添付様式別紙5を記載させる目的は厚生労働省の療養費の実態に係る分析資料に資する位置付けに過ぎず、だからこそ評価の内容により“支給の可否を判断するものではない”としたものとお見受けするのです(問23の回答)が、支給決定の可否の判断に使用しないものを療養費支給申請書の添付に求める目的をご教示願います。

                                     以 上


by ueda-takayuki | 2017-07-12 12:28

上田たかゆきオフィシャルブログ


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