ショートステイではすべての往療料を認めないとする大阪府後期高齢者医療広域連合の不支給処分に反論する
2017年 07月 10日
ショートステイではすべての往療料を認めないとする大阪府後期高齢者医療広域連合の不支給処分に反論する審査請求事件。現在は先方の大阪府後期高齢者医療広域連合からの弁明書の主張に対し、上田が反論書を作成し本日発送した。大阪府の後期高齢者医療審査会での審理が始まったということであるが、結審まで1年以上かかると思う。個人情報保護に留意して差し支えのない範囲内で私の反論書面の主旨を掲載しておく。
上記代理人 氏名:上田 孝之
反 論 書
送付のありました平成29年●月●●日付大広給第●●●号の大阪府後期高齢者医療広域連合長 N の弁明書に記載のある弁明の理由等に対し、次のとおり反論します。
療養費は患者が鍼灸施術を受けた場合、当該鍼灸施術は高齢者の医療の確保に関する法律第七十七条において支給され、その具体的手続きとしての療養費の支給申請にあたっては、療養費支給申請書に高齢者の医療の確保に関する法律施行規則第四十七条にある事項を明記する以外に、運用上は厚生労働省保険局長及び同局医療課長の発出する通知により、療養費としての「現金給付」が認められていることについては、審査請求人と処分庁とにおいては争いのない事実である。 現行の療養費の支給事務については、審査請求代理人が作成した「審査請求の趣旨及び理由」のなかで、通知の各要素を既に十分説明したところである。療養費の支給にあたっての判断基準として構成される「患家」の定義が必ずしも明確になっていないが、一般常識的には患者が特定の建築物に滞在・居住する患者及び同居する家族と認定することができる。 処分庁は本件を「ショートステイ先」ということに終始異常にこだわり、ショートステイは宿泊等一時滞在であることから患家には該当しないと決めつけているが、本件に関しては患者家族申出書にも記載している通り“生活の主体がほぼ施設”であり、施術者意見書の添付資料から見ても週6日間施設で生活をしていることからも、宿泊等一時滞在とはいえない。患者の生活基盤と日常生活の実態からして処分庁は判断を誤っている。審査請求人は現在までも、また今後の見通しも、いずれも「当該施設への状態としての長期滞在」であり、在住していると見做される実態及び環境下にある。 (一)療養費の往療料の算定が認められるかどうかは、あくまで医療保険各法の療養費の運用指針として発出されている厚生労働省保険局医療課長通知や医療課が発出する事務連絡をその根拠としなければならない。療養費に係る高齢者の医療の確保に関する法律と介護保険法及び老人福祉法との間に療養費、とりわけ往療料の算定に係る何らの調整規定もないのであるから、医療保険の給付にあたり介護保険・老人福祉法における単なる用語の整理として、それぞれ「短期間入所」、「短期的入所」の概念を持ち出した上で、高齢者の医療の確保に関する法律においての現金給付を否定することは「別法令の準用的運用」として認められない。 当該施設における療養費に係る往療料の算定が認められないのであれば、厚生労働省保険局医療課長は、何らかの運用指針を必ず通知している。その通知は未だに発出されていないし、今後も発出されない。何故なら、往療料の算定に当たっては個別的な具体事例を十分勘案・調査したうえで支給の可否を決定することが保険者に求められているからである。にもかかわらず、処分庁は「介護保険法に『短期間入所』という記述がある以上、ショートステイで被保険者が滞在する施設について、『長期間入所』とみなすことはできない」というような書面上だけで判断を行っているのだ。審査請求代理人も、特別養護老人ホームが「短期間入所」させる位置付けであることは重々理解している。だが、本件に関してはそれが実態ではないという事を再三訴えているのである。“患家”の定めが通知や法令で定められていない以上、その判断は実態から導き出すべきではないのか。もし、療養費支給申請書に“特別養護老人ホーム”という記載があるだけで「ショートステイだから不支給決定」としているならば、何の為に保険者権限として患者調査があるのか甚だ疑問であるとともに、そのような事務処理は問題視されるべきであろう。 患者家族申出書として、審査請求人の家族から提出のあった書面内容でも明らかなとおり、審査請求人の配偶者である夫が介護をするにあたり、夫の体力的な問題から、週に1度だけ自宅に帰り、他の週6日間はすべて当該施設に入居していることが、過去から現在、また将来においても継続する実態を無視して、処分庁はあくまで用語の定義上における「短期間入所」あるいは「短期的入所」にこだわったうえで、事実や実態を無視して不支給処分としている。これらの判断の誤りは決して許されないことから、原処分は早急に取り消されるべきである。 現在、生活の主体がほぼ当該施設に滞在している実態を処分庁は実地調査して確認すればよいだけのことである。高額な費用を要する施設に入居することが金銭的費用の問題で困難であることから当該の状況下に置かれるも、ようやく日常生活の維持が保たれ、夫婦間の関係も良好に推移しているなかで、現行の状況をあくまで「生活の拠点」としていることが分かるものである。 審査請求人の現況は、神経痛の罹患により、左片麻痺、上・下肢に麻痺が生じており、単に麻痺による痺れ感のみならず、刺激痛としての疼痛も生じていることから、当面施設内において週6日間滞在する環境が今後とも継続することから、まさに「ロングステイ」の状況下に置かれている。
(二)次に、医療保険各法のうち、処分庁と同じ後期高齢者医療広域連合のうち和歌山県後期高齢者医療広域連合と福島県後期高齢者医療広域連合並びに国民健康保険の保険者である秋田市長が保険者の立場から施術師・施術機関あてに発出した通知を証拠として提出する。 これらの書面で通知されていることは、はり師、きゅう師の施術に係る療養費の適正化対策の徹底であり、和歌山県後期高齢者医療広域連合、福島県後期高齢者医療広域連合そして秋田市長の通知で明快に判断できることは、往療料の算定ができる施設として、具体的に有料老人ホーム、養護老人ホーム、経費老人ホーム、老人短期入所施設(ショートステイ)、グループホーム、特別養護老人ホーム等の共同入所型施設においては往療料の対象となるものの、複数の患者が施術を受けたなら、別々に算定できないこと、すなわち1人分だけしか往療料として請求できないことを明確に述べたものである。そうすると、逆読みすれば当然ながら「1人分」だけは認められるのだから、特別養護老人ホームでも老人短期入所施設(ショートステイ)でも往療料は認められる。 ただし、複数人分の患者を同時に施術するのは、医療課長通知の「同一家屋内(介護老人福祉施設等の施設を含む。)」に該当すると判断されるので、別々に複数の患者分をそれぞれ往療料の算定はできないことを通知したものである。 この取扱いについては、平成28年9月30日付保医発0930第4号厚生労働省保険局医療課長通知により、運用の一部改正が行われ、課長通知で示されていた「はり師、きゅう師及びあん摩マッサージ・指圧師の施術に係る療養費の支給の留意事項等について」(平成16年10月1日付保医発第1001002号)が一部改正されたことにより、第6章6が改められ、同一家屋内の運用上の判断を具体的に「建築基準法第2条第1号に規定する建築物を同一の建築物とされた」ことから、平成28年10月1日より当該建築基準法上同一の建築物に居住する複数の患者を同一日に施術した場合の往療料は、別々に支給できないこととなった。簡単に言えば、同一家屋とは運用上「屋根が同じで繋がっているものは認められない」と現在は各保険者間の判断として統一されている。ここで着目すべきことは、一人に限定するか、別々に支給できるかの議論の結論であって、そもそも特別養護老人ホームでも老人短期入所施設(ショートステイ)でも往療料は認められることの周知徹底を促した通知であることを処分庁は理解すべきである。審査請求代理人は、今後とも処分庁から再弁明が繰り返されても、その都度、反論を展開して参りたい。
以 上
審査請求代理人 上 田 孝 之 印 |