奈良県後期高齢者医療の審査では、はりきゅう療養費の同意書に医師が書き込んだ往療のコメントを全面的に信用して返戻するという


奈良県後期高齢者医療広域連合奈良県国民健康保険団体連合会療養費審査委員会からのこの度の返戻理由は、同意書に記載のある往療を要する箇所に「月1回までとする」との記述を貴審査委員会がまともに取り上げ、月1回までと同意医師が限定していることから、9回の往療は認めないという返戻だ。このことについて私は反論する。

そもそも、はり師きゅう師の施術は医師の指導監督のもとに行われるものではないのである。鍼灸師は、看護師、理学療法士や作業療法士などのパラメディカルスタッフではないことから、医師の指導監督のもとに業務を行わず、あくまで鍼灸師の自らの判断により施術を行うものだ。

 確かにあん摩マッサージ療養費においては、厚生労働省保険局医療課長通知で示された療養費の支給の留意事項等についての第5章 往療料の3により「施術の同意をおこなった医師の往療に関する同意が必要であること。」との定めに従って、マッサージであれば返戻理由として成り立つ場合も考えられるだろう。しかしながら本件は鍼灸療養費なので、そもそも医師の往療の有無に関する確認作業は不要であるうえ、施術回数を医師が特定することはできないのである。すなわち、医師に往療回数を特定する権限を国は与えていないということ。

 鍼灸療養費においては、平成146月以降、それ以前まで実施されていた6ヶ月65回を限度とする期間・回数制限が撤廃されたことをもって、施術回数及び往療回数は施術を行う施術者の判断で実施できることになったではないか。保険者が支給決定にあたりこれを完全に否定するのであれば、何故医師の月1回までというのが患者の症状から見て妥当であるのかどうかを、施術者に説明する責任が生じる。また、実際に患者を施術した治療家が往療の必要性を認め、患家の強い希望から往療を実施したことを、単に同意医師の記載をもって支給できないというのであれば、あくまで客観的な判断材料に資するデータ等の提供を求める。返戻ではないだろう。支給できないのであれば不支給だろう。もちろん審査請求して完全にひっくり返して強制的に支払わせることを全力で行うが、不備ではないのに、どうして「返戻」なのか。私には保険者の姿勢が分からない。まるで返戻すれば社会正義を実現しているかのような錯覚に陥っているのではないのか。返戻は詰まる所、患者に対して負担を課すことに直結するのである。そもそも鍼灸療養費における医師の同意書というものは、施術者が行おうとしている患者が抱える疾患が、6疾患かどうかの特定を行うことが同意医師に求められていることであり、往療すべき回数自体を求めるものではないのである。


by ueda-takayuki | 2017-05-23 14:58

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