6疾患でも鍼灸療養費が不支給になるのならいったいどうすればよいのか

厚生労働省からの「通知」により、患者さんを診断の上、保険医として6疾患に罹患しているということを診断した後(医師法第20条はクリアー)、患者さんに対して同意書を交付すれば、保険者は厚生労働省保険局長の「通知」で示されたはり・きゅう施術療養費支給の要件である「医師による適当な治療手段のないもの」として取り扱い、療養費を支給する運用が承認されている。つまり、6疾患に係る同意書の交付により、「支給要件はすべて満たされる」という支給運用上の実務処理が確立している訳だ。従って保険医から同意書が交付されている以上、これを保険者が不支給と扱うことは通知の解釈を誤ったものである。

しかし、最近この6疾患でさえ不支給処分が相次いでいる。本当に困ったものだ。現実に6疾患で保険医から同意書の交付を受けてはり・きゅう施術療養費を申請したところ、不支給処分とされる事例は許されないと思う。しかし、何も分からない社会保険審査官という行政もこれを認め後押ししている始末なのだ。本来の厚生労働省の通知の趣旨は、医師の同意書が交付されていれば、これに従い療養費を申請すれば法律上要求される支給の要件は満たされていると解釈しても差し支えない=(イコール)支給しても構わないというものと理解すべきである。つまり、このような運用により療養費を支給しても、支給手続上は適正なものであるとする運用基準を国の通知により指し示したものなのだ。

しかし、一部の保険者ではこれとは違う解釈を採り不支給処分とする。ここでの争点は、同意書が交付されれば、支給に際して保険者に本来的に要求される「医師による適当な治療手段のないもの」とする判断は不必要となり、同意書以外の資料による判断は一切許されないのかという点だ。つまり、通知により運用基準は示されたのだが、この通知は保険者の本来的な調査権限や判断権限を奪うものと理解するか、または同意書以外の資料による調査や、その結果による実質的な判断は排除されてはいないとするのかなのである。

 上田はモチロン前者を採用するが、保険者は後者を選択しがちである。行政はどうかといえば、社会保険審査官への審査請求の決定を調べると、保険者同様後者を採用する。そうすると、たとえ6疾患であっても、保険者の独自調査の結果、支給要件に該当しないと判断し得るならば不支給にしてもよろしいという立場になるから目も当てられない。通知の意味を理解できない“シロウト”どもである。

同意書の交付にあたり、不正や不当なものであれば、当然のことながらこの同意書に基づき支給される療養費は認められない。医師を脅かして同意書を書かせたとか、保険医療機関に勤務する妻が先生の不在時に押印して同意書を虚偽に作成するとかいうものだ。しかし、そうではなく、きちんと保険医が患者さんを診察したうえで、6疾患であると診断を下し、同意書を発行したのならば、その同意書発行をもって「医師による適当な治療手段のないもの」として鍼灸療養費の支給される要件を満たしたものとして差し支えない=支給してよろしい、との通知の運用が当然であると考えるのだ。

6疾患で申請したにもかかわらず、保険者の調査により不支給決定となる大半は、同意医師に対する保険者照会の結果、同意医師が「医師による適当な治療手段のないものとは言えないが、頼まれたので鍼灸治療に同意した」というものだ。このような回答をされると、保険者は厚労省の通知に反すると考えてしまうのだ。

また、同意医師に保険者が確認し、「先生は患者さんの主治医ですか?」との問い合わせに、「主治医ではない」と回答すれば、厚生労働省の通知では同意は主治医から得ることになっているので、主治医ではない同意書は認められないなどと決定され、めちゃくちゃな不支給の取組みがなされていいる。このことは非常に重要であり、仮に通知で示された「主治の医師」と「主治医」が健保組合や行政の主張のとおり「同一」であるのなら、私どもが組織を挙げて取り組んでいる同意書交付を得る取組みが否定される危険性を孕んでいる。上田の考えは、そもそも主治の医師とは、厚生労働省の疑義解釈資料問9の回答に明記されているように「整形外科医に限定したものではなく、現に治療を受けている医師」を指し、主治医という概念、すなわちホームドクターを意味するものではないと考える。「主治の医師」と「主治医」を同一視したうえで混同したならば、実際に治療を受けている医師の同意書さえ認めずにホームドクターのみの同意書しか認めないとする横暴がまかり通ることとなり、6疾患での療養費の支給が崩壊してしまう。

また、同一期間内の病院からのお薬や診療実態も徹底的にチェックされる。これらは鍼灸療養費を支払わないための嫌がらせの取組みなのだが、行政がこれに加担している始末なのだ。今後も主治医でない者の同意書の効力が否定されるのであれば大問題である。

6疾患は当然支給されるものと治療家たちは思っていたのだが、そうではなくなったということか。同意した医師への照会文書に対する回答のしかたを同意医師がきちんと理解していないと、結果として療養費は同意書があっても不支給となる傾向にある。そして、この傾向が加速している。通知上認知された6疾患でさえ支払われないのであれば、療養費の支給対象疾患の適用拡大など夢物語であり、逆に療養費の申請絶滅につながる大変な問題である。

保険適用の拡大が望まれるにもかかわらず、国から既に認められている認知済みの6疾患でさえ不支給となることを、この業界が受け入れてはならないのだ。

ここは全力で抗議し、患者さん・被保険者を味方につけて、鍼灸療養費請求を守り抜く覚悟が治療家には求められている。

まずは、不支給になったなら必ず「審査請求」をし、闘う姿勢を示すことが大切。患者さんのためにも、審査請求の趣旨のための反論の論理構成は、会員には上田が全力で対応致します。

けっして諦めずにがんばりましょうね。


by ueda-takayuki | 2017-05-17 14:21

上田たかゆきオフィシャルブログ


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