愛知県信用金庫健保組合は患者回答相違をもって支給済み療養費返還を柔整師に求めるという

愛知県信用金庫健康保険組合は、この度、当方会員である柔道整復師が施術を行った支給済の療養費について、平成26年10月から平成27年6月までの施術分としての支給済療養費につき返還を求める旨の通知をしてきた。しかしながら、本件返還通知について疑義があることから健保組合の説明を求める取組みを行ったところである。
1. 不支給理由が抽象的すぎること
 不支給理由として「本人に照会したところ、負傷部位と治療部位の相違があることが判明したため。」とあるのだが、具体的に患者本人がどの部位につき施術を受けたことについて、申請内容とどの点が相違しているのかの説明を文書にて明らかにしてほしい。これだけであれば当方が組織として会員に説明するにあたり、あまりにも情報量が少ないと思われるのである。また、その患者回答が単なる患者の勘違いということはないのであろうか。患者回答の整合性の裏付けを何をもって担保されているのか説明願いたい。
2. 不支給決定通知並びに支給済療養費の取消しに係る書面交付について
 今回の案内で、不支給と決定されたことによる返還を求める意図は理解できる。しかしながら、支給済療養費の取消処分の通知書の交付を頂いてはいない。このことから、支給済療養費の取消決定処分通知の交付を求める。なお、不支給決定通知には「60日以内に東海北陸厚生局社会保険審査官に対し審査請求をできる旨」の教示欄が必要となるのは当然のことだ。
3. 原理原則では被保険者に返還を求めることが適当であることについて
 返還請求については、当方組合員宛てとなっているのだが、受領委任の取扱いにおいて、既に何らの問題もなく支給決定がなされた療養費について、なぜ柔道整復師に返還を求めるのか。療養費の保険給付金の帰属は被保険者にあるのを知らないのか。
 柔道整復師は受領委任の取扱規程に従い、被保険者に支給されるべき、被保険者に帰属する保険給付金を、単に被保険者の委任を受けて代理して受領しているに過ぎないものである。不正請求や不当な行為により療養費が支給されたのであれば、その責任を柔道整復師が負うのは当然であるが、本人照会の結果、本人回答と請求部位が一致していないだけで、なぜその全額を柔道整復師が返還しなければならないのか。
 柔道整復師がこの返還請求によって返還してしまったならば、別途、施術を行った柔道整復師は被保険者宛てに請求行為を起こさなければならなくなるだろう。その煩雑な事務処理を考えれば、健保組合が直接被保険者に返還を求めれば済むことではないのか。また、現行の受領委任の取扱規定上、支給済療養費を柔道整復師に返還させるという規程がどこにあるのか。何処にもないのである。いずれにしても、当方組合員は本件処分につき納得できないと申し述べていることから、本件返還請求に応じることは現状においては困難である。このことから、返還請求についての案内をそのまま返戻させていただく。保険者は是非とも平成28年2月17日判決言渡平成26年(行ウ)第37号療養費支払請求事件の判決文をよく読んでもらいたい。療養費は柔道整復師の金ではない。被保険者に帰属する被保険者に対する保険金である。返還を求める先は被保険者であるのは当然ではないのか。受領委任の取扱いなど厚生労働省保険局長の通知により運用されているに過ぎず、法律上ではあくまで療養費は被保険者(国保の場合は被保険者の属する世帯の世帯主)に帰属する債権であって、診療報酬債権とは異なることを、行政も保険者もそして柔整業界も何ら理解していない。愚かなことである。
by ueda-takayuki | 2016-02-25 12:28

上田たかゆきオフィシャルブログ


by ueda-takayuki