日本国土開発健保組合の患者回答を求める書面や広報紙面に抗議する

日本国土開発健康保険組合に対し、当方から抗議の意味を込め疑義照会し、書面にて回答を求める取り組みを行ったことを報告する。
保険者が行う接(整)骨院の受診についての被保険者対応の広報活動のあり方について疑義があるということだ。この度、日本国土開発健康保険組合が柔道整復施術を受けた患者に対し「接(整)骨院の受診について」と題された広報活動を実施されるとともに、接(整)骨院受診についての問合せをされ、あわせて貴健保組合の作成による「整骨院・接骨院は病院ではなかったの!?」と題された周知徹底書面により、柔道整復施術療養費に対する患者への啓蒙活動を実施されていることが明らかになっている。この一連の対応は、保険者が行う保健事業の一環としての適正化の観点から実施されることは理解しているのだ。
 しかしながら広報誌としての書面作りにおいてはページ数があまりにも多く、同様の主旨を繰り返されることが散見されることから、患者が柔道整復施術を受療することに対し悪い印象を持ち、かつ量的ボリュームが多いことからも、まるで「整骨院に行くことは悪いこと」との印象を強く誘引される作りになっているように見受けられることから、疑義を申し述べるものである。
 また、健保組合の今般のこの対応については、健保組合に所属する被保険者並びに患者から、私共協会会員である柔道整復師に直接文書の内容に関してのクレームが寄せられていることをよく考えてもらいたい。
このことから以下の7点につき疑義の具体内容を示すこととしたので、それぞれについて回答を求めることとして、通知した。

1.部位転がしでないにもかかわらずそれを印象付ける書面作りについて
 部位転がしが疑われる患者について広報されるのは理解できるが、本件については全く部位転がしが疑われる請求事例ではないにも関わらず、同一書面の記載により連絡をされているではないか。年に数回の急性における外傷性疾患を治療する場合においては、年に何度かしか治療しないのは当然だ。
 にもかかわらず長期にわたる部位転がしをイメージする『定期的な身体ケアや体調調整の為の受診』と考えられる、などと一括して述べられることは、個別の患者の実態に必ずしも全てに当てはまるわけではないのだ。このことから、柔道整復施術を受ける全ての患者に等しく部位転がしを疑うような記載については強く抗議するものである。

2.本件書面は明らかに柔道整復施術の受診抑制になること
 健保組合の取り組みの書面の記載によれば、柔道整復施術療養費が保険料の無駄遣いであり、適正な支給にあたらない案件であるという悪意かつ意図的な解釈が見受けられるのだ。例として、接(整)骨院受診経緯の回答届の様式、「原因はわかりますか?」の箇所に着目した場合、あえて1~6まで先に保険対象外である事例を並べたうえで、最後の7だけに保険適用ができるものを並べてある。
 すなわち、7だけが保険対象であって、後はすべからく療養費の対象外となるものを列挙し、保険対象該当をあえて7として○を付けさせるという仕様だ。1~6までには○をしやすく、これをもって自動的に返戻理由を構成することが意図的に行われている。

3.健保組合の患者照会は患者にとって煩雑すぎる疑いがあること
 健保組合の文書照会の書面構成は、総合的に試験問題に対する解答を求めるようなものであり、回答するにあたり被保険者におかれては多大な負荷が発生することが容易に推察される。これもすなわち柔道整復治療の受診抑制に直結するものと憂慮する。

4.「整骨院・接骨院は病院ではなかったの!?」と題された書面構成について
 この書面中、いくつかの表現において意味不明な点がある。ここではその一つ一つについて疑義を申し述べることは割愛するが、例えば「接骨医、整骨医、ほねつぎなどとも呼ばれる」の一文を見ても、ほねつぎは厚生大臣(当時)が指定する事項として、柔道整復師法第24条第1項の四に規定される厚生省告示第70号により認められているのだが、接骨医・整骨医と呼ばれていることは私共としては与り知らないところだ。柔道整復師が医師ではないことを、ここでこのように強調する必要性がどこにあるというのか。
 また、5ページの6右下部のまた書きのところですが、何の基準をもってどちらか一方の整骨院でしか保険が使えないと主張しているのか説明を求めたい。この場合、日本国土開発健保組合としては先に受診した整骨院を優先するのかどうか、基準を示さない中でこのような表現は患者に混乱をもたらすだけである。この点においては、国は何らの基準も定めていないにもかかわらず保険が使えないと主張している根拠を示してほしいのだ。

5.審査請求の取扱いについて
 当該書面においても日本国土開発健保組合は不支給の決定に不服である場合に、社会保険審査官に対する審査請求を案内していることは評価できる。
 しかしながら当協会会員が施術を行った患者に係る審査請求が、実際に関東信越厚生局社会保険審査官宛てに提出され、当協会の会員が治療した柔道整復施術に係る健保組合の不支給決定処分が行政の判断により「健保組合の原処分は妥当ではなく、取り消さなければならない」との決定がなされたことは記憶に新しいところ。日本国土開発健保組合の誤った事務処理を行政が指摘したうえで、健保組合はこれに従ったということであれば、今後も同様なことを繰り返すということを主張しているのかについて、日本国土開発健保組合の基本的な考え方を明らかにしてほしい。これ以上柔道整復師に対し明確な理由もなく嫌がらせを続けるのであれば、当方は患者の協力を得て審査請求を継続していく。社会保険審査官から注意されても、なお柔道整復施術療養費の支給を阻むのはなぜなのかを明らかにすべきである。

6.厚生労働省4課長通知で示された案文を参考にしていただきたいこと
 健保組合が今回実施された患者照会の照会文書並びに患者宛の広報周知文書は、その記載内容から考えると行き過ぎであることを縷々述べてきた。療養費の適正化の観点から不正請求を許さないという健保組合の姿勢は当然であり、その基本スタンスを私共も尊重し協力でき得る範囲で対応することはやぶさかではないのだ。
 例えばこのような対応ではなく、平成24年3月12日付厚生労働省保険局4課長連名通知で示された適正化方策としての様式例1及び別添3-1、別添3-2を広報活動に使用するなど、ルールに基づいた対応をしてもらいたいだけである。

7.患者の署名を求めることについての現実的な対応について
 健保組合の広報文書によれば、患者署名を求めるタイミングについても言及し、患者自身が施術内容等記載内容をよく確認してから署名するよう指導しているようだが、このことについて当方の見解を述べる。
 平成24年3月12日付厚生労働省保険局担当4課長連名通知の中で「療養費支給申請書の内容(負傷原因、負傷名、日数、金額)をよく確認して、署名または捺印する」とあることから、このような注意喚起をされることは理解はできる。
 しかしながら実際の運用として、月の最終来院日に署名を求めることは困難である。月の最終来院日がいつになるのかは不明であり、中には初検で来院したその日以降通院しない患者も、事実存在するのだ。このことは内閣参質168第15号の質問主意書に対する政府答弁書の中で「柔道整復師の施術所への来所が患者により一方的に中止される場合があること等から、患者が来所した月の初めに署名を行い、当該申請書を作成する場合もあることは、厚生労働省としても承知している」とあるように、厚生労働省としても認識されているところ。ちなみに当方においては、施術部位が記載された領収証を発行するなどし、患者に療養費支給申請書の内容を確認させることで、厚労省通知の主旨にも従うこととなるよう運用している。このことから、健保組合が被保険者並びに患者に対し啓蒙している署名の方法は現実的には対応が困難であり、被保険者並びに患者の混乱を招く恐れが濃厚である。
                       
by ueda-takayuki | 2015-12-02 16:02

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