KDDI健保組合は電話による医師の再同意を信用できないと返戻してきた

KDDI健康保険組合から、はり・きゅう療養費支給申請書の再々返戻がまたあったので、論点整理して再々請求を行ったことについて報告したい。今回文書にて説明をしたうえで再申請したにもかかわらず、再度返戻されたKDDI健保組合の被保険者の、はり・きゅう療養費支給申請書について、返戻理由の意味をなさないことから、またまた、このまま再々申請するので早急なる支給決定を強く求めるものである。施術者である鍼灸師が再同意を求める基本的な考えと、施術者および患者が国の通知に基づいたとおりに、療養費支給申請を行ったことは前回文章にて詳細に説明したにもかかわらず、何も分かっていないようだ。
 前回の説明書面で縷々述べたことについて、KDDI健保組合は全く理解していないということで宜しいのであろうか。そうだとすれば、更に追加して再同意についての説明を上田から解説したい。施術者が電話連絡により同意医師から再同意を得ていることを申し述べても、これがまったく信用できず客観的な事実確認をしなければならない、と健保組合がいうのであれば、それは健保組合が療養費支給決定における判断材料として、保険者業務として確認すべきであるのは当然のことである。しかし、その負荷を鍼灸師に負わせることは認められないのだ。電話による口頭同意が正当に認められることは厚生労働省保険局医療課から発出された疑義解釈資料(平成24年2月13日付)の(問15)に対する回答として「再同意を得る方法について特に決まったものはないが、電話や口頭による確認でも差し支えないこととしている。」と国が電話による再同意を認めていることは明らかである。
 厚生労働省保険局が事務連絡によって認めている事務処理を否定するのであれば、それはそれでKDDI健保の勝手ではあるが、少なくとも確認作業においては保険者が行うべきことであり、施術者側において電話による口頭相同意を立証する義務は無い。
 保険者が支給適正な支給決定のために再同意の事実確認を同意医師に対して行うことは正当な確認業務として理解できるというものの、同意医師がその回答を怠ったことを施術者に負担させることは認められない。
 また健保組合は医科の療養給付として診療行為が行われた請求内容である、診療報酬明細書(以下「レセプト」と言う。)に鍼灸の再同意にかかる医療行為が行われていないことをことさら問題視されているのだが、再同意が電話または口頭により行われた場合には、療養費文書交付料(100点)の算定は認められず、また具体的に鍼灸施術にかかる同一疾病としての療養の給付がなされなかったのであれば、医科レセプトは提出されないのは当然のことである。なぜ再同意の有無の確認を医科レセプトで判断しようとお考えなのか、上田たかゆきとしては理解できかねるところなのである。
 また再同意を得る場合の医師の診察についても、疑義解釈資料の(問8)にあるとおり、「医師の判断により診察を必要とせず再同意が与えられる場合もあり得るが、医師が再同意を与える際に診察が必要と判断された場合等はその指示に従っていただきたい。なお施術者が患者に代わって再同意の確認をしても差し支えないこととしているので、この場合も同様に取り扱われたい。」と、必ずしも医師の診察を要さないことは明らかである。
 次に、口頭同意の事実及び日付が明記された施術録等資料の添付を求められることについてであるが、保険者が療養費の支給決定に当たって施術録の写しの添付を求めることのできる厚生労働省保険局医療課長の通知上の根拠は、留意事項第6施術録において「保険者等からの施術録の提示および閲覧等を求められた場合は速やかに応じること」とされているのだが、この規定上で留意しなければならないことは、保険者であればすべからく、どのような理由であっても施術録の提示及び閲覧ができる旨と解釈するのではなく、保険医療機関及び保険医と同程度の要件の場合であり、患者に対する守秘義務に係る取扱いは同じであると理解する。
 ちなみに、この通知は公益社団法人日本鍼灸師会、公益社団法人全日本鍼灸マッサージ師会、公益社団法人日本あん摩マッサージ指圧師会、社会福祉法人日本盲人会連合会の会員に限局されているではないか。当方は4社団には属していないことを理解していないのか、よくわからない返戻である。
 また、施術録は、言うに及ばず鍼灸あんまマッサージ師が行う治療行為などの施術の実施にあたり、個人の身体的特徴や過去に罹患した病歴をはじめとした個人のプライバシーとして保護すべき情報が集約されている書面である。これを開示するにあたっては、個人情報保護法で定めのある各規定を満たしていることの確認が求められる。また、単に被保険者及び被扶養者の「患者」としての個人情報のみならず、施術を行った鍼灸あんまマッサージ師の施術内容や施術手段等の記載もあることから、施術者の治療行為としてのプライバシーをも保護しなければならない事象が生じるのだ。こんなことも今までに保険者には何度も何度も繰り返して説明してきたのに、何も分かってない。
 施術録等を添付しても個人情報保護法に抵触しないと貴健保組合が判断されることの見解を求めたい。
 療養費を支給決定するにあたり、提示や閲覧ではなく、鍼灸あんまマッサージ師の作成した施術録の提供を求めることができるとする保険者としての貴健保組合の徴求に係る法規上の根拠を明らかにしていただかなければ施術録の提供はできない。
 繰り返すが、鍼灸あんまマッサージ施術療養費支給申請にかかる施術録の提供が、なぜ個人情報保護法上何ら問題なく、なぜ違法性を阻却できるということなのかをご指導願いたい。といっても、私に説明できる保険者など1,460健保組合があっても、一つもないではないか。
 上記内容とも関連するが、患者の身体的特徴を含めて、施術開始前、施術中、施術終了後における問診・触診・視診など、患者さんへの一切のアプローチにより知り得た患者さん特有の様々な個人特定情報を、故もなく他言することはできない。
 患者さんに施術するにあたっての知り得た情報は、他に洩らしてはならないことは、施術者である鍼灸あんまマッサージ師も医療の一端を担っていることから、医科と同様、守秘義務を負っているのだ。
 厚生労働省が定めた個人情報保護法に関するガイドラインには、施術録は患者の個人情報と治療の方針や処置法・治療法等施術者の大切な知的財産ともいうべきものが含まれている。鍼灸あんまマッサージ師の施術の方法や手技技術等を含む治療方針及び処置法並びに治療方策等の知的財産をむやみに口外できないのは当然のことである。
 仮に、鍼灸あんまマッサージ師が秘密を守る義務に違反したことにより患者から訴えられ、罰せられることを、何をもって保証担保しているのであろうか。
 ことさら、鍼灸あんまマッサージ師には守秘義務など議論するまでもなく、保険者が施術録の記載内容を外部に持ち出させること、すなわち療養費支給申請書に施術録の写しを添付させることの正当な理由の法律根拠が果たしてあるかどうかである。
 療養費の支給を受けようとするときは、厚生労働省令である健康保険法施行規則第66条に掲げる事項を記載した申請書を保険者である健保組合に提出しなければならない。本件は施行規則に掲げられている必要事項の記載はすべて満たした申請書により支給申請を行っているところである。よって、厚生労働省令上は何らの不備・齟齬もないではないか。
 保険医療機関が各保険者あてにレセプトの提出をもって保険請求するにあたり、医科等のレセプトに施術録の写しの提供を求める保険者はない。実際に、保険者としても上記記載の個人情報の保護及び施術者の守秘義務に掲げた観点から、医科等のレセプトには施術録の写しの提供は求めてはいない。裁判所の命令がない以上、その提出は不可である。医科等のレセプトには何ら提出を求めることのない施術録の写しを、なぜ鍼灸あんまマッサージ療養費についてその提供を求めるのか説明してほしい。
 いずれにしても、施術録の開示にあたっては、個人情報の保護及び施術者の守秘義務の観点から、少なくとも患者さん本人と施術者の了解を要するものである。この点は、個人情報保護や医療従事者の守秘義務に関する裁判判例を持ち出すまでもなく、当然ながら保護されて然るべきものであると考えるのであるが、私の論理構成と主張は間違っているのか。施術録は、療養費請求の根拠となるものであることから、保険者から施術内容について調査照会のあった場合は直ちに答えられるよう常時整備しておくことが求められることは大切であり、当方も事あるごとに施術録の整備については会員に対する保険指導の中で行っているところである。
 施術録の写しの提供はその対応如何によっては「人権侵害」にも直結する重大事案であることから、その取扱いには慎重さが求められるのは当然だ。
 いずれにしても、本件は返戻の理由になっていないことから、このまま再申請することとしたので、速やかに支給決定してほしい。
by ueda-takayuki | 2015-09-15 11:48

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