トランス・コスモス健保組合は寝違えを不支給処分にしている

トランス・コスモス健保組合という保険者が行う患者照会で「寝違えた」と回答がされた分について、「寝違えでは支給できない。不支給処分」が5件ほどあったことに反論する。患者が寝違えと回答すれば、柔道整復師の行う頸部捻挫等の施術は保険で認められないのか。そんなことはないだろう。柔道整復師の見立てでは明らかに頸部捻挫ではないのか。これは療養費の支給対象となると考える。「寝違え」についての患者回答の記述があることをもって不支給決定された件について、柔道整復師の「寝違え」に係る基本的考え方を述べたい。
これは養成所の学校の教科書にもきちんと掲載されていることである。頸部捻挫の保険請求にあたって、柔道整復師が負傷原因欄や摘要欄等における記載として「寝違え」と書いた場合、又は患者照会に対し患者が回答した場合にすべからく不支給とする健保組合の対応は誤りである。受領委任の取扱規程上問題があるものと考えるのだ。
寝違えとは、頸部捻挫のひとつの態様であり、急性疼痛に頸椎や肩甲骨の運動性が制限された状態ををいう。頸部はそもそも可動域が大きく、その支持組織が相対的に弱い為に頸部捻挫を起こし易いものである。また、頸部捻挫により頸部をはじめ、肩部、背部あるいは事例によっては上肢にいたるまで疼痛やシビレ感などを伴うことが少なくないので注意を要する負傷であるといえるのだ。
寝違えの具体的な発生機序については、急性又は亜急性の外傷性の発生機序として位置づけられ、就寝中などにおいて、大部分は長時間の不自然な体制・姿勢で寝ていたり、睡眠中に不用意に首をひねったり、また、このようなときに肩甲骨を動かしたりしたときに起こる一過性の筋痛である。
頸椎の退行性変化を基盤として起こる場合や炎症性の疼痛による場合もあるだろう。
寝違えの一般的な症状としては、頸椎の運動制限はあらゆる方向にみられるが、とくに捻転や側屈が制限されることが多い実態にある。疼痛は僧坊筋、菱形筋、胸鎖乳突筋、肩甲上神経部などにみられ、これらの圧痛部に小指頭大のしこりを触れることもある。さらに頸部から両側肩甲間部にまで疼痛が放散することも少なくない。
柔道整復師が行う施術としては、主に圧痛部位を冷やしたり、逆に温熱を加え手技療法や理学的療法、物理療法を組み合わせたりして治療を行うこととなるのだ。
また、必要に応じて牽引療法や軽い頸部・肩甲帯の運動指導も有効なことが多いことで知られるものでもある。
柔道整復師の治療する得意分野の一つとして軟部組織損傷の頸部捻挫があることに鑑みれば、「寝違え」も柔道整復師の施術の適応症と考えることができる。頸部軟部損傷においては、四肢の軟部損傷とは異なり、脳を支える重要な神経や血管の径路であることから機能的だけでなく、筋靭帯の損傷の腫脹疼痛、拘縮、外傷性炎症等が二次的の圧迫や刺激となって、結果的に自律神経の失調異常や頭部、上肢部の種々の症候群を惹起する場合もある。柔道整復師としては特にこの点に留意して施術に努めているのが実態であるのだ。
以上のことから、患者がいう「寝違え」という症状に対する柔道整復師が行う施術行為は、頸椎捻挫等という急性又は亜急性の外傷性の負傷であるものと考えられることから、療養費の支給要件を満たしているものといえるのだ。
不支給になったのであれば、患者が審査請求をして、健保組合の処分の不当性を行政に調べ直してもらうことが大切であり、けっして泣き寝入りしてはならない。施術者も声を大にして反論しなければならない。
by ueda-takayuki | 2015-06-24 11:43

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