柔整療養費の返戻理由としての亜急性と長期を認めないことに対する意見

健保組合や柔整審査会が慢性及び長期施術を認めない取組みとしての返戻及び照会に対し、私は亜急性の基本的考え方と、長期施術を否定されるものではないことを、以前から国の通知を用いて反論してきたところです。                    
亜急性と長期施術に関する私の考えを述べます。
1.「亜急性」の当方の見解について
療養費の支給基準上において支給対象と認められている、亜急性の外傷性について、保険適用になる旨にかかる当方の見解を述べる。
「亜」というのは、国語的な用語として「準ずる」という意味であるから、亜急性とは急性に準ずるということ。すなわち、急性と慢性の中間に位置する状態のことをいい、急性よりも熱などの変化が緩やかなものをいう。整形外科では、急性期が受傷後~2日間程度までを指すのに対し、亜急性期とは受傷してから2~3週間程度の時間が経過したものを指します。つまり「時間の経過」として捉える。急性期、慢性期、亜急性期とそれぞれに「期」とあるところ当然そういう見方となる。
これに比し、柔道整復では反復性の外的圧力要因や微小の外力、また、これらの外力にかかるストレスによる組織断裂や骨棘形成、石灰沈着、また、陳旧例では関節の不安定性があるものまでを含んで考えることになっている。例を挙げると、主婦の家事手伝いで痛めた手関節や布団の上げ下ろしで負担のかかった腰部に発生した事象についても、療養費の支給対象になると判断するのが柔整の亜急性であり、一方、ある程度の時間の経過をもって、例えば10日ほど前に躓いて階段から落ちた場合の負傷を亜急性期だというのが整形外科の定義だ。現在の療養費の算定基準における留意事項にも柔道整復施術療養費における亜急性の定義がなされていないのが現状である。仮に、亜急性の定義が単なる時間経過の概念だけで定められたなら、柔道整復師の保険請求のかなりの部分が保険対象外とされる可能性があり、逆に、既出の反復・継続性の微小外的要因の全てをも亜急性とするならば、状態として陳旧性及び慢性傾向にあるものも、その殆どが療養費支給対象になり得る取扱いが可能となるもの。
厚労省保険局医療課長通知で定めのある留意事項において「亜急性期」となっていれば、貴国保組合のご主張どおり受傷後の時間経過による定義付けもできようが、厚労省の通知には「期」の文字がないことから、やはり時間経過のみをもって決められるものではなく、あくまで発生機序により急性か亜急性かを判断すべきもの。
このことから、柔道整復療養費にかかる亜急性の負傷定義なり基準がない現状では、単純且つ一律の取扱いではなく、個別具体的に判断していくことが求められる。
現行の医療課長通知では、冒頭でも触れましたように、亜急性の外傷性の負傷は認められているうえ、介達外力による負傷をも保険適用として差し支えないとなっている。
次に、全国100を超える柔道整復師養成施設において教育されている教科書についても触れておく。ここでは参考までに(社)全国柔道整復学校協会の監修で、実際に養成施設で教科書として使用されている「柔道整復学理論編」の亜急性損傷を転記する。
いずれにしても、亜急性負傷が広く保険適用として認められることをここで説明させていただき、貴国保組合がこのことをよく理解できない現状での施療内容の照会についての本件書面作成は、柔道整復師の治療を保険を使って受けたいと希望する患者にとっては受診抑制にあたり、また、施術者にとって施術妨害となる危険性がある。
亜急性(蓄積性あるいは反復性)
反復あるいは持続される力によって、はっきりとした原因が自覚できないにも関わらず損傷が発生する。このなかには、臨床症状が突然発生するものと、徐々に出現してくるものがある。前者は、先に述べた荷重不均衡状態、あるいは静力学的機能不全の状態下で損傷される場合が多く、組織損傷が拡大していくなかで、外力として認知できない場合あるいは軽微な外力で突然発生したかのように機能不全に陥る。後者は、静力学的機能不全の状態であることが多く、症状は次のような経過をたどることがある。
まず疲労感を覚えやすくなることで、身体に何か異常があることに気づくが、当初はそれを強く感じない。経過とともに疲労するのが早くなり、また安静によっても容易に回復しなくなることで、それを損傷と認識するようになる。次いで、この疲労状態は疼痛となって現れ、さらに症状が強くなると、局所の腫脹、発赤などが現れたりする。
亜急性損傷は、以下に示すような分類がなされる。
(1)使いすぎOVERUSE(2)使い方の間違いMISUSE(3)不使用後の急な負荷DISUSE  ―出典 柔道整復学・理論編 4損傷時に加わる力 18頁―

2.施療が長期となる場合の必要性について
患者は痛みを訴えて整骨院を訪れる。その患者を実際に診るのは柔道整復師という厚生労働大臣免許を取得した施術者であり、その患者が訴える痛みを取り除くのも柔道整復師である。「急性・亜急性」という言葉の意味を知らず、痛みの原因の記憶を失念していたり、曖昧な患者もいる。
柔道整復師が診て「急性又は亜急性疾患」として軟部組織の損傷や捻挫の症候が患者に現れているから保険で治療ができると判断した結果であり、個々の事例についても、一律に「2~3ヶ月を超える部分については不適切」との照会内容は不当・失当である。患者が赤発・熱感・疼痛・腫脹・機能障害等を訴え、また、その主訴等により施術者である柔道整復師が診た結果として、該当部位にこれらの症候が見られたことから、柔道整復師としての見立てで保険適用としての施術を行ったもの。疼痛除去や腫脹の緩解、そして関節可動域の拡大等、施術が長期化しても症状の改善等の治療効果が期待できるものと判断したことによる施術の長期化であることから、請求は妥当なものと考える。
療養費の算定上、長期に継続して施術を要する場合には、長期・多部位における定額算定の方法を認めている。また、3月を超えるのであれば長期施術継続理由書の作成が規定されており、さらには5か月を超える月における施術について20%の長期施術減額逓減措置となっていることから、長期にわたる施術の取扱いというものがルール化されているところである。
これらの国が定めたルールがあるにもかかわらず、2~3ヶ月を超える部分については不適切と断定することはできない。
by ueda-takayuki | 2012-09-13 12:09

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