堺市のホームページの記載は柔整治療の抑制につながり問題だ

堺市(堺市担当は健康福祉局生活福祉部保険年金管理課)がホームページに載せている「柔道整復師による施術(整骨院・接骨院)を受けるとき」の記載内容が、柔道整復師の治療を抑制する可能性があり、患者が柔道整復師の施術を受ける権利を妨害する可能性があることから強く抗議すると共に、ホームページに記載された各点についての趣旨の説明を求める文書を送付した。書面で回答を求めることとしました。
疑義照会文の一部は次のとおり。
「保険給付が受けられない場合」の記載について

1.「日常生活による単純な疲労や肩こり・腰痛」と記載されています。しかし、通知の表現では、正しくは「単なる肩こり、腰痛・筋肉疲労」となっていることから、単なる肩こりや単なる腰痛が保険対象外ということです。すなわち「単なる腰痛」が保険対象外ということになるので、この部分の記載は不正確であって患者さんの誤解を招くものです。肩こりの症状を呈するものの中にも、柔道整復師の業務範囲内の傷病が存在すると考えます。国の通知にある記述どおりに記載しなかった理由を明らかにしてください。

2.「スポーツ等による筋肉疲労・筋肉痛」との記載は筋組織の軽微な損傷がスポーツ外傷として運動に起因することはよくあることであり、外傷性の疾患として療養費の支給要件を満たす場合があります。ここでは保険対象か保険対象外かを患者さん自身に判断させることになり誤りであると考えます。疾病に起因するかどうか、また、保険対象かどうかは施術者の判断に任されるべきです。これらの症状の中に私たち柔道整復師の業務範囲に含まれるものもあると考えます。この点についての見解を求めます。

3.「ケガによるものではない、加齢等からくる痛み」とありますが、療養費の対象となるものは「急性又は亜急性の外傷性の負傷」であると通知されていることから、「亜急性」の負傷であると認識できる場合は療養費の支給対象となります。
それでは保険の対象となる「亜急性の外傷性」について、柔道整復業界の基本的考え方は次のとおりです。
「亜」というのは、国語的な用語として「準ずる」という意味であるから、亜急性とは急性に準ずるということ。すなわち、急性と慢性の中間に位置する状態のことをいい、急性よりも熱などの変化が緩やかなものをいう。整形外科では急性期が受傷後~2日間程度までを指すのに対し、亜急性期とは受傷してから2~3週間程度の時間が経過したものであり、陳旧とまではいえないところ、つまり「時間の経過」として捉える。急性期、慢性期、亜急性期とそれぞれに「期」とあるところ当然そういう見方となる。これに比し、柔道整復では反復性の外的圧力要因や微小の外力、また、これらの外力にかかるストレスによる組織断裂や骨棘形成、石灰沈着、また、陳旧例では関節の不安定性があるものまでを含んで考える。例を挙げると、主婦の家事手伝いで痛めた手関節や布団の上げ下ろしで負担のかかった腰部に発生した事象についても、療養費の支給対象になると判断するのが柔整の亜急性であり、ある程度の時間の経過をもって、例えば10日ほど前に躓いて階段から落ちた場合の負傷を亜急性期だというのが整形外科の定義である。
厚労省保険局医療課長通知で定めのある留意事項において「亜急性期」となっていれば受傷後の時間経過による定義付けもできようが「期」の文字がないことから、やはり時間経過のみをもって決められるものではなく、あくまで発生機序により急性か亜急性かを判断すべきものである。このことから、柔道整復療養費にかかる亜急性の負傷定義なり基準がない現状では、単純且つ一律の取扱いではなく、医学用語辞典に記載のあるとおり“急性と慢性の中間に位置する状態”に当たるかどうか、個別具体的に判断していくことが求められるものである。
現行の医療課長通知では、亜急性の外傷性の負傷は認められているうえ、介達外力による負傷をも保険適用として差し支えないとなっています。
次に、参考までに(社)全国柔道整復学校協会の監修で、実際に養成施設で教科書として使用されている「柔道整復学理論編」の亜急性損傷を転記します。
いずれにしても、亜急性負傷が広く保険適用として認められることを貴市が理解できない現状でのホームページへの記載は、柔道整復師の治療を受けたいと希望する患者さんにとって受診抑制にあたり、また、施術者にとって施術妨害となります。
亜急性(蓄積性あるいは反復性)
反復あるいは持続される力によって、はっきりとした原因が自覚できないにも関わらず損傷が発生する。このなかには、臨床症状が突然発生するものと、徐々に出現してくるものがある。前者は、先に述べた荷重不均衡状態、あるいは静力学的機能不全の状態下で損傷される場合が多く、組織損傷が拡大していくなかで、外力として認知できない場合あるいは軽微な外力で突然発生したかのように機能不全に陥る。後者は、静力学的機能不全の状態であることが多く、症状は次のような経過をたどることがある。
まず疲労感を覚えやすくなることで、身体に何か異常があることに気づくが、当初はそれを強く感じない。経過とともに疲労するのが早くなり、また安静によっても容易に回復しなくなることで、それを損傷と認識するようになる。次いで、この疲労状態は疼痛となって現れ、さらに症状が強くなると、局所の腫脹、発赤などが現れたりする。
亜急性損傷は、以下に示すような分類がなされる。
(1)使いすぎOVERUSE(2)使い方の間違いMISUSE(3)不使用後の急な負荷DISUSE  ―出典 柔道整復学・理論編 4損傷時に加わる力 18頁―
患者さんは痛みを訴えて整骨院を訪れます。その患者を実際に診るのは柔道整復師という厚生労働大臣免許を取得した施術者であり、その患者が訴える痛みを取り除くのも柔道整復師であります。「急性・亜急性」という言葉の意味を知らず、痛みの原因の記憶を失念していたり、曖昧な患者もいるのです。柔道整復師が診て急性又は亜急性疾患として軟部組織の損傷や捻挫の症候が患者に現れているから保険で治療ができると判断した事例についても、一律に「スポーツ等による筋肉疲労・筋肉痛であれば保険給付が受けられない」とホームページで広報することは不当・失当です。これら亜急性などについての貴市のご見解をお伺いいたします。

4.「脳疾患後遺症、神経痛、リウマチ等の慢性病からくる痛みやしびれ」との記載ですが、疾病自体や疾病からくる症状について医学的知識のない患者さんに判断させることが問題です。医療過誤にも繋がります。患者さんは疼痛が治らないから来院するのであり、患者実態を無視して一律に保険給付から除外することは問題がある広報の仕方であると考えます。このことについての認識を明示してください。

5.「症状の改善が見られない長期にわたる施術」という記載も問題があります。柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準には、長期施術に係る算定方法が定められ、初検日を含む月から起算して5ヶ月を超える月における逓減措置や、長期施術継続理由書の作成に見られるような、長期にわたる施術に関するルールが定められています。にもかかわらず、一律に長期にわたる施術が保険給付対象外となるような記載は誤りであると考えます。また、貴市が「長期にわたる施術」と判断されるのは、具体的に何ヶ月以上が長期に該当するのかも明らかにされたい。

上記1から5までの各々の事項について、貴市の明確な回答を求めます。
by ueda-takayuki | 2012-06-18 12:41

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